の温暖化・大気汚染・エネルギー安全保障 バイオ燃料は最悪の解決策―米国の新研究

農業情報研究所(WAPIC)

09.1.15

  スタンフォード大学の研究者が、地球温暖化・大気汚染による死亡・エネルギー安全保障問題のエネルギー関連主要解決策をレビュー、それぞれをランクづける研究を発表した。研究は、もしそれだけで米国のすべて の自動車を動かすとした場合の影響を計算することで、提案されているエネルギー、燃料を比較した。影響については、温室効果ガス排出や大気汚染だけでなく、水供給・土地利用・野生動物・資源利用可能性・熱汚染・水の化学物質汚染・核拡散・栄養不良への影響も考慮した。

 この研究によると、最も望ましいエネルギー源は風力発電だった。トウモロコシや植物廃棄物からのバイオ燃料は最悪だ。

 Mark Z. Jacobson,Review of solutions to global warming, air pollution, and energy security,Energy Environ. Sci., 2009
  http://www.rsc.org/delivery/_ArticleLinking/DisplayHTMLArticleforfree.cfm?JournalCode=EE&Year=2009&ManuscriptID=b809990c&Iss=Advance_Article

 バイオ燃料は環境に優しく、エネルギー安全保障に貢献すると、最近はとくに米国やEUで政策的に支援され、日本も追随している。しかし、人間の健康、野生動物、水供給、土地利用に対しては化石燃料以上に有害だ。米国のすべての自動車は、少なくとも理論的には、3㎢以下の土地しか必要としない風力タービンで電力を供給される電気自動車に置き換えることができる。米国の自動車を動かすためにトウモロコシを栽培するために必要な土地面積は、風力タービン設置のために必要になる面積の30倍になる一方、バイオエタノールは風力発電以上の温室効果ガスを排出する。

 最近とくにメリットが強調される原子力と”クリーン”石炭も、バイオ燃料と並んで最悪のランクに位置づけられる。原子力は、化石燃料を燃やさねばならない原子力発電所の計画・建設段階の排出が半分を占める温室効果ガスと大気汚染が風力の25倍になる。テロや核戦争による致命的損害のりリスクも考えねばならない。その燃焼で排出されるCO2を捕捉し、地下に埋める”クリーン”石炭については、発電所の建設と利用の過程で、風力タービンの建設と利用の場合の110倍の炭素が排出される。

 研究者が推奨する解決策のベスト7は、望ましい順に@風力、A集光型太陽熱発電、B地熱エネルギー、C潮流エネルギー、D太陽パネル、E波力エネルギー、F水力発電ダムだ。