タイ 原油価格急落でエタノール産業開発j計画が頓挫?

農業情報研究所

09.2.2

 原油価格の暴落でタイのエタノール産業開発計画が頓挫しそうだ。バンコク・ポスト紙によると、エネルギー省高官が1月27日、原油価格急落のために47のエタノール生産ライセンスのうちの半分以上が離陸できそうにないと発表した。

 政府は代替燃料開発に初めて着手した5年前、日産能力が合計で1000万ℓに達する47のライセンスを与えた。ところが、原油価格が昨年7月半ばの1バレル147ドルのピークから43ドルにまで暴落、燃料タンクにガソホール(エタノール・ガソリン混合燃料)を入れる魅力はすっかりなくなってしまった。

 エネルギー開発効率局(DEDE)によると、タイは現在157万ℓの日産能力をもつが、生産されているのは能力の4分の3ほどの120ℓにすぎない。エタノール需要は年末までには120ℓまで伸びるだろうが、現在は90万ℓで、30万ℓの過剰生産となっている。

   現在生産している11のライセンス工場の日産総能力が120万ℓで、日産総能力40万ℓの2工場も生産を開始する準備ができている。他の日産能力30万ℓの他の1工場も7割方完成している。年末までには100万ℓほどが過剰になりそうだ。

 従って、工場建設に未着手のラインセンス保有者が自分からライセンスを放棄することになっても不思議はない。今後何年か―何年とは言えないが―、投資には大変なリスクが伴う。さらに、列車、パイプライン、保管庫などのインフラも欠き、ブラジルなどのエタノール輸出国に比べ、タイのエタノール物量コストは非常に高い。加えて、今年はべトナムも能力過剰になり、輸出するだろうから、国際市場での競争相手も加わる。

 DEDEは、エネルギー省がガソホール小売価格をできるかぎり低く抑え、消費を刺激することを期待する。現在、ガソホール95(オクタン価95の石油・エタノール混合燃料、石油90%・エタノール10%を混合したもので、E10とも言われる)とプレミアムガソリンとの1ℓ当たり価格差は13.30バーツ、レギュラーガソリンとの価格差は5.50バーツに広がっている。

 他方、タイエタノール製造者協会は、最善の解決策は、現在は同一の燃料用アルコールとアルコール飲料に対する規制を別々のものにすることだと言う。そうすれば輸出が容易になり、生産者が助かるということだ。

 Ethanol plans axed on low use,Bangkok Post,1.28
 http://www.bangkokpost.com/business/economics/10571/ethanol-plans-axed-on-low-use

 とはいえ、原油価格下落で海外の燃料用エタノール市場も縮小に向かっている。”バイオガソリン”(バイオETBE)の利用拡大で温室効果ガス排出削減に大いに寄与すると海外に売り込む”夢”をなお棄てない日本が救世主となるのだろうか。