EU 米国からのバイオディーゼル輸入にダンピング防止・補助金相殺関税

農業情報研究所(WAPIC)

09.3.13

 EUが3月11日、米国からの輸入バイオディーゼルに対する暫定ダンピング防止関税及び暫定補助金相殺関税の課税を決めた。不当廉売(ダンピング)慣行や政府補助金によって生産コストを割り込む低価格でヨーロッパ市場に参入した米国バイオディーゼルメーカーがヨーロッパのメーカーの市場を不当に奪い、損害を与えているとして、穀物メジャーのアーチャー・ダニエル・ミドランド(ADM)やカーギルを含む米国メーカーに、トン当たり最大で237€の相殺関税と、最大で208.20€のダンピング防止関税の暫定課税を決めた。この関税保護は4ヵ月から6ヵ月続き、5年に及ぶ可能性もある。

 ・ダンピング防止:http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2009:067:0022:0049:EN:PDF
 ・補助金相殺:http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2009:067:0050:0084:EN:PDF
 ・European Commission comments on the decision to impose duties on US biodiesel,3.12
  http://ec.europa.eu/trade/issues/respectrules/anti_dumping/pr120309_en.htm

 欧州委員会の調査は、およそ60のヨーロッパメーカーで組織する欧州バイオディーゼル委員会(EBB)の提訴を受けて08年6月に始まった。欧州委員会によると、米国からの輸入バイオディーゼルのEU市場におけるシェアは、2004年:0.1%、2005年:0.4%、2006年:1%だったが、2007年には11%に急増、08年3月までの12ヵ月には17.2%に達したという。

 欧州委員会は、米国の不当な競争がヨーロッパ生産者から急成長する市場(EUのバイオディーゼル消費は04年から07年の間に3倍以上に増えた)を奪い、生産停止や縮小に追い込んだと言う。ADMにはトン当たりで237€の相殺関税と23.60€のダンピング防止関税、カーギルには 213.80 €の相殺関税60.50€のダンピング防止関税を暫定的に課す。

 しかし、米国の全国バイオディーゼル委員会(NBB)は、早速、これは 大間違い、WTOルール違反だとする声明を出した。EUバイオディーゼル産業の損害は米国からの競争ではなく、その悪しきビジネスモデル、原料価格高騰、EU諸国政府の有害な政策のせいだと言う。

 そういう米国のバイオディーゼル産業でも、破産申請や生産(計画)縮小が相次ぐ。そもそもバイオディーゼルのビジネスモデル自体が間違っているのではないか。そのなかでの大西洋間貿易紛争、出口があるとは思えない。