ジンバブエ 2017年までに輸入燃料の10%をヤトロファディーゼルに

農業情報研究所(WAPIC)

09.4.1

 国の基礎食料品であるトウモロコシの首都における小売価格が昨年6月以来5倍にも急騰しているジンバブエが、2017年までに輸入燃料の10%ほどに代替するヤトロファ・バイオディーゼルの生産を目指すそうである。ジンバブエ国営石油(Noczim)のバイオ燃料プログラムマネージャー・Abisai Mushaka氏が明らかにした。

 Zimbabwe eyes 2017 biodiesel target with increased jatropha output,Check Biotech,3.31
 http://bioenergy.checkbiotech.org/news/zimbabwe_eyes_2017_biodiesel_target_increased_jatropha_output

 会社は、バイオディーゼル生産のために、毎年12万ヘクタールにヤトロファを植えることを目標にしてきた。昨年12月以来、農民は週に150万の苗木を植えてきた。Noczimは、これを週に300万に倍増させることを望んでいる。これによって年に5万f植えられることになり、2015年までに10%(1億ℓ)の目標の達成が可能になる。プランテーションは、大部分は国の乾燥・半乾燥地域にあり、小規模なものという。

 ただし、プログラムの持続可能性を確保するためには、なお重要問題が残っている。植栽のための大規模なまとまった地所や、多数の小規模加工施設を確保する必要があるという。

 (注)何度も繰り返すが、ヤトロファの大規模商業栽培には大きなリスクがある。2008年FAO食料・農業白書から引用しておく。

 ヤトロファ―“ミラクル”な作物?

 ヤトロファ(Jatropha curcas)はエネルギー作物として知れわたっている。この植物は干ばつに耐え、限界地でもよく育ち、年に300ミリから1000ミリの降水しか必要とせず、定着が容易で、侵食地の修復を助けることができ、成長が速い。これらの特徴は、樹木の被覆や土壌肥沃度の減少を恐れ、食料作物との競合を最小にするエネルギー 作物を求めている多くの途上国を引き付ける。同時に、この小木は、仁の重さの30%の油既に石鹸、蝋燭、化粧品に使われており、カスターオイルと似た医薬品特性を持ち、調理や発電にも有用な油を含む種子を2年から5年で産出する。

 北部ラテン/中央アメリカの原生種には、ニカラグア、メキシコ(毒性が無いか、少ない種子として区別される)、カーボベルデの3品種がある。第三の品種はカーボベルデに定着、アフリカとアジアの諸地域に広がった。カーボベルデでは、油抽出、石鹸製造用途でポルトガルに輸出するために大規模に栽培された。ピークの1910年には、ヤトロファの輸出は5,600トンに達した。

 主張されているヤトロファの多くの特長は、油やバイオディーゼルの大規模生産や小規模な農村開発の計画を生み出した。国際的投資家、国内投資家が、ベリーズ、ブラジル、中国、エジプト、エチオピア、ガンビア、ホンジュラス、インド、インドネシア、モザンビーク、ミャンマー、フィリピン、セネガル、タンザニアでのヤトロファ大規模栽培に突進している。最大規模のベンチャーは、20032007年の間に40万fにヤトロファを栽培するインド政府のナショナル・ミッションである。目標は、20012012年までに、1,000万fの荒蕪地で栽培され・年間を通じて500万の雇用を生み出すヤトロファから生産されるバイオディーゼルで、国のディーゼル消費の20%を置き換えることである。[中略]

 この植物は、アフリカでも、しばしば町や村の土地を分ける垣根として、広く育っている。マリでは数千キロメートルの垣根を見ることができる。それは、家畜から庭を護り、風と水による侵食を減らすのに役立つ。種子は既に石鹸製造や医療目的で利用されており、ヤトロファ油は、低速ディーゼルエンジン、発電機、充電器、製粉機などの動力源として、非政府組織により奨励されている。タンザニアやその他のアフリカ諸国では、小規模農村電化プロジェクトのエネルギー源としてヤトロファ油を奨励するパイロットプロジェクトが進行中である。

 多くの国で行われている相当な投資とプロジェクトにもかかわらず、ヤトロファの農学に関する信頼できる科学的データは利用できない。投資の決定が依拠する土壌、気候、作物管理、作物遺伝物質などの変数と収量の関係を立証する文書記録は乏しい。示される収量の大きな差は、土壌肥沃度や水の利用可能性などのパラメーターと関係づけることができない。1991年から1999年まで行われたニカラグアでの実験のような90年代の実験は失敗に終わった。

 実際、ヤトロファに関する多くのポジティブな主張は、成熟したプロジェクトの経験に基づいていないように見える。Jongschaap et al. (2007)は、中小規模のヤトロファ栽培は土壌−水の保全、土壌改良、侵食抑制に役立ち、生垣、薪、緑肥、照明燃料、地方的石鹸生産、殺虫剤、医薬などに利用できると論じている。しかし、彼らは、養分要求(土壌肥沃度)・水利用・労働投入が少なくて油の収量が高い、食料生産との競合はない、病害虫に強いといった主張は科学的証拠による裏づけがないと結論した。最も決定的な欠陥は改良品種と利用可能な種子の欠如である。ヤトロファは、未だ信頼できるパフォーマンスを備えた作物として実証されていない。

 非現実的な期待に基づくヤトロファへの突進は金銭上の損害につながるだけでなく、地方コミュニティの信頼を損なうという恐れには、十分な根拠があるように見える。持続可能なヤトロファ栽培は、生産と販売の不確実性を取り除くことを意味する。適する生殖質と様々な条件の下での収量に関する一層の研究が必要であり、作物の持続可能な開発を促進するためには市場も確立されねばならない。