米国 エタノール副産物・DDGSに抗生物質が残留 瀕死のエタノール産業に追い討ち?

農業情報研究所(WAPIC)

09.4.7

 米国食品医薬局(FDA)が、トウモロコシエタノール生産の副産物であるDDGS(穀物蒸留粕)が、しばしばエタノール製造過程から残留する抗生物質を含むことを発見した。

 トウモロコシエタノールの生産は、トウモロコシの燃料への転換を酵素、イースト、糖に頼る。この過程の主要な敵は、乳酸を作る病原性微生物(バクテリア)だ。これが増えると、イーストがもはやエタノールを生産できないほどに酸化が進み、発酵が止まってしまう。そこで、エタノール工場は、ペニシリン、バージニアマイシンなどの馴染みの抗生物質でバクテリアを制御することになる。

 これは、第一に、抗生物質抵抗性バクテリアの増加を促す恐れがある。何年か前、中西部のエタノール工場で採取されたバクテリアの中に抵抗性のものが発見された。第二に、食物連鎖を通して抗生物質が人に入り込む可能性がある。最近の食品安全への関心の高まりのなかで、FDAは詳細なチェックを始めた。

 1年前、DDGSのサンプルを集め、抗生物質の分析を始めた。60のエタノール工場からのサンプルが集まった。多くは、主に4つのタイプの抗生物質―ペニシリン、バージニアマイシン、エリスロマイシン、タイロシン―を含んでいた。

 これら抗生物質の含有量がガイドラインを超えるのかどうかははっきりしない。ガイドライン自体にも問題があり、それはパッチワークで、DDGSの抗生物質の安全レベルも決まっていない。しかし、FDAがエタノール産業における抗生物質の規制を決めれば、影響は甚大だ。

 DDGSは、今や安価な主要家畜飼料源となっている。その販売や利用の制限は、利益が薄く、これを大きな収益源としているエタノール産業や、それに依存する畜産農家に重大な損害を与えることになる。FDAはさらに検査を続け、この夏に最終報告を出す予定という。

 Antibiotics in Distillers Grains Raising Concerns at FDA,soyatech,4.6
 http://www.soyatech.com/news_story.php?id=13197

 原油価格低下で青息吐息、死にかかっている米国エタノール産業に、致命的な追い討ちがかかるのだろうか。