トウモロコシエタノールに温暖化防止効果はない カリフォルニア低炭素燃料規格外

農業情報研究所(WAPIC)

09.4.23

  カリフォルニア州環境保護庁大気資源局(CARB)が今日、”低炭素燃料規格”(Low Carbon Fuel Standard)を実施するための規則を採択する予定だ。提案されている規則は、地球温暖化防止対策の一環として、ガソリン・ディーゼル輸送燃料の炭素強度(単位エネルギーあたりの炭素排出量)を、2020年までに2006年レベルから少なくとも10%削減することを目指している。これにより、温室効果ガス(GHG)の年間排出量が1500万トン(CO2換算)減るとされている。

 しかし、エタノール産業がこれに猛反対している。低炭素燃料規格に合格する燃料の候補には、トウモロコシやサトウキビを原料とするバイオエタノールや大豆を原料とするバイオディーゼルなどの現在米国で主流のバイオ燃料(とこれを混合したガソリン、ディーゼル)、将来のハイブリッド車用の電気、燃料電池車用の水素、農業廃棄物や木質エネルギー作物からのエタノール、農業廃棄物からのバイオディーゼルなどが含まれる。

 ところが、トウモロコシエタノール生産の拡大→トウモロコシ(→食料全般)価格の上昇→世界中の作物生産増大→森林・草地・湿地の破壊といった土地利用への間接影響を考慮したCARBのライフサイクル評価では、現在の米国トウモロコシ原料エタノールのGHG排出量が、化石燃料に比べてほとんど減少しないか、却って増えてしまう(下表)。つまり、低炭素燃料規格に合わないわけだ。

ガソリンとガソリン代替燃料の炭素強度(の例)
(1メガジュールあたりCO2相当量排出量・グラム)

  直接排出 土地利用から
ガソリン(州内平均) 95.86 0 95.86
トウモロコシエタノール 47.40-75.10 30 77.40-105.10
中西部平均 69.40 30 99.40
カリフォルニア平均 65.66 30 95.66
サトウキビエタノール(ブラジル) 27.40 46 73.40

Source:http://www.arb.ca.gov/regact/2009/lcfs09/lcfsisor1.pdf
and http://www.arb.ca.gov/regact/2009/lcfs09/lcfsisor2.pdf

  カリフォルニアから締め出されたのでは、既に青息吐息の米国エタノール産業の未来はない。セルロースエタノール産業への投資者さえ、カリフォルニア規則がもたらす副作用を心配しているということである。

 CARB:Board Meeting Agenda for April 23 & 24, 2009 - Sacramento
 http://www.arb.ca.gov/board/ma/2009/ma042309.htm

 関連ニュース
 Corn Ethanol Will Not Cut Greenhouse Gas Emissions,Scientific American,4.20
 http://www.sciam.com/article.cfm?id=ethanol-not-cut-emissions
 California plans to cut fuels' carbon footprint,Sacramento Bee,4.23
 http://www.sacbee.com/378/story/1799227.html