日本向けバイオディーゼル企業 ルソン島北部で40万fのココナッツ栽培へ

農業情報研究所(WAPIC)

09.6.20

 「日本とフィリピンに活動の本拠を置くリーディングなココナッツ・バイオディーゼル・ディヴェロッパー」を自称する Pacific Bio-Fields Holdings Plc社が、日本に販売するバイオディーゼルの原料となるココナッツを栽培するために、フィリピン・ルソン島北部の40万ヘクタールもの巨大面積の土地を使用することをフィリピン政府に許されたそうである。フィリピン政府がココナッツオイルから作られるバイオディーゼルプロジェクトのために国内・外国企業の土地使用を認めたのはこれが初めて、ルソン島北部の使用されていない公有地を、最大50年、無料で使用することを許したという。

 Manila OKs foreign firm to plant biofuel coconut,Reuters,09.6.18
 http://www.reuters.com/article/GCA-GreenBusiness/idUSTRE55H1WJ20090618

 それにしても、昨年のアジア米騒動の中心地となり、今年もなお200万トン以上の米を輸入しなければならないフィリピンで、何故40万ヘクタールものバイオ燃料用作物プランテーションなのか。Yuji Taniguchi社長は、これらの土地は、大部分は、かつて支配的だったタバコ生産が衰退した後に放棄された土地で、食料との競合は問題にならないといっているそうである。

 しかし、ルソン北部のかつてのタバコ生産地と言えば、植民地時代にタバコ栽培を強制された南北イロコス州、ラ・ウニョン州、アブラ州である。その多くの土地は、米をはじめとする食料作物の生産に使われている。これら4州の総面積は約115万へクタール、その35%もの土地をバイオ燃料用ココナッツ栽培に当てることが食料生産(増強)や地域住民の生活に影響を与えないとは信じがたいことである。

 政府が使用されていないとする”公有地”と、それが提供する水その他の天然資源は、実際には多くの現地住民が様々な形で利用しているのが常である。2007年1月、フィリピンで開かれた東アジアサミット に際し、中国政府とフィリピン政府は、中国企業がバイオ燃料作物生産も含む農業生産プロジェクトのために124万ヘクタールものフィリピンの土地を借り受けるという協定に調印した。しかし、これが発覚すると、フィリピン国内には国の食料安全保障が脅かされる、この協定で150万もの農民が土地から追い出される、1000ヘクタール以上の土地の企業へのリースを禁じる国内法に違反するといった批判が巻き起こり、政府は、9月には、この協定の”棚上げ”を発表せざるを得なくなった。このプロジェクトは、それっきり、未だに動き出していない。(その代わりにかどうかは知らないが、その後、中国(企業)は、アフリカのコンゴ民主共和国に300万ヘクタールものオイルパームプランテーション用地を確保、ザンビアにも200万ヘクタールものオイルパームプランテーション用地の提供を迫っている)

 Gov’t places more China deals on hold,Inquirer,07.9.25
 http://newsinfo.inquirer.net/breakingnews/nation/view/20070925-90480/Gov%92t_places_more_China_deals_on_hold
 Probe sought on biofuels pacts between RP and China
,Inquirer,07.5.20
 http://newsinfo.inquirer.net/breakingnews/nation/view/20070520-67037/Probe_sought_on_biofuels_pacts_between_RP_and_China
 Philippines,China to sign 19 farm deal totaling P240B
,Inquirer,07.1.16
 http://business.inquirer.net/money/topstories/view/20070116-43628/Philippines%2C_China_to_sign_19_farm_deals_totaling_P240B

 ルソン北部の40万ヘクタールもの土地の利用を企業に認めることも、明らかに国内法違反だろう。恐らくは雇用創出に期待してこれを許したフィリピン政府もクレージーだが、会社側の識見も疑われる。ここで生産されたバイオディーゼルは5年以内 に日本のユーザーに販売する目論見というが、日本のユーザーも、こんなバイオディーゼルはボイコットするのみである。