米州開発銀行 土地利用変化がラテンアメリカバイオ燃料産業の基本問題

農業情報研究所(WAPIC)

09.9.18

 森林・草地破壊や小農民からの土地収奪、貧困助長につながるなど、轟々たる批判を浴びながら中南米諸国のバイオ燃料産業開発を積極的に支援してきた米州開発銀行(IDB)のバイオ燃料開発専門家・Elizabeth Beallが、ラテンアメリカのバイオ燃料産業開発が直面する問題は土地利用の変化だと語ったそうである。

 彼女によると、ラテンアメリカにおける温室効果ガスの最大の排出源は、主に農業と森林破壊にかかわる土地利用の変化であり、これがバイオ燃料推進の基本的問題をなす。ラテンアメリカが気候変動に関する国際的論議で役割を果たし、CDM(クリーン開発メカニズム)クレジットを受けとることを望むならば、 バイオ燃料推進に伴う土地利用変化を極力抑える必要がある。

 また、2008年には食料品価格が高騰、一部の人々はこれをバイオ燃料のせいにした。このことからして、バイオ燃料推進は食料安全保障にも配慮せねばならない。「ラテンアメリカには重大な食料安全保障問題があり、我々は、土地が、基本的には食料のために利用されるように保証することを望む」 と言う。

 こうして、IDBは、今後、サトウキビ・エタノールだけでなく、劣化地や有機廃棄物を利用するバイオ燃料の生産を重視する。ヤトロファの利用も考える。

 持続可能なバイオ燃料を支援するために、IDBは最近、多くの環境・社会要因に基づいてプロジェクトを評価するバイオ燃料スコアカードの新バージョンを発進させた。他の開発銀行は、不確実性を理由に投資をためらっているが、IDBは”良いバイオ燃料”と”悪いバイオ燃料”を差別化するツールの開発をしたいという。

 さらに、混作、輪作、不耕起など、生物多様性をできるかぎり損なわず、土壌への炭素貯留を増やし、不作やバイオ燃料作物の価格変動のリスクを分散させる保全農業を重視したいと言う。

 Land use change key issue facing biofuel industry, expert says,Business News Americas,9.16
 http://www.bnamericas.com/news/oilandgas/Land_use_change_key_issue_facing_biofuel_industry,_expert_says

 どうみても先細りのバイオ燃料投資、必死の生き残り策というところだろうか。