バイオ燃料生産で、メキシコ湾デッドゾーン縮小の努力は水の泡

農業情報研究所(WAPIC)

09.9.19

  米国・ペンシルベニア州の研究者が、スウィッチグラスやトウモロコシの茎葉も含むバイオ燃料原料作物の生産促進は、メキシコ湾の広大な”デッドゾーン”(酸欠海域)の縮小を一層難しくするという研究を発表した。

 メキシコ湾のデッドゾーンは、主にミシシッピ川流域の農地に施される窒素肥料が洗い流され、大量の窒素酸化物がメキシコ湾に注ぐことで形成される。その面積は、通常の夏季には、およそ2万㎢に達し、海洋生物と沿岸住民の職に多大な影響及ぼしている。環境保護庁(EPA)は、このデッドゾーンを5000㎢にまで縮小する目標を掲げてきた。

 しかし、バイオ燃料増産のために、現在の中心的原料で、大量の窒素肥料を必要とするトウモロコシの増産に走れば、使用される窒素肥料の量はますます増え、畑から流去する窒素酸化物もますます増える。デッドゾーンは、縮小どころか、拡大することになるだろう。

 研究者は、2007年エネルギー法(エネルギー独立安全保障法)が定めるバイオ燃料利用目標(2022年に360億ガロン)を達成するためのバイオ燃料作物増産の影響を分析した。トウモロコシ、大豆、スウィッチグラス、トウモロコシ茎葉などのバイオ燃料作物に対する窒素肥料施用のライフサイクル分析によると、エタノール原料をトウモロコシからセルロース(スウィッチグラスやトウモロコシ茎葉)に切り替えても、流去する窒素酸化物は20%ほど減るだけだ。

 デッドゾーンを5000㎢にまで縮小するのは、生産食料・飼料・工業養需要を満たすための現在の生産を考えるだけでも難しい。バイオ燃料という新たな要素が加われば、目標達成はますます難しくなるということだ。

  Christine Costello et al.,Impact of Biofuel Crop Production on the Formation of Hypoxia in the Gulf of Mexico,Environmental Science & Technology,2009; 090813095901020 DOI: 10.1021/es9011433