持続可能なパームオイル円卓会議 GHG排出基準設定に合意 EUバイオ燃料基準を満たすため

農業情報研究所(WAPIC)

09.11.6

  ”持続可能なパームオイルに関する円卓会議”(RSPO)が、これに参加する企業や生産者が守るべき原則と基準(クライテリア)に温室効果ガス(GHG)排出に関する原則と基準を明示的に含めることに合意した。

 生産者、加工業者、貿易業者、製造業者、小売業者、消費者、金融機関、環境NGOなどから800人以上が参加したRSPO第7回会合(クアランプール)最終日の11月4日、この提案*が採択されればRSPO脱退も辞さないとしていたマレーシア(MPOA)とインドネシアのパームオイル協会が、これら原則と基準を強制的なものでなく、自主的に守るべきものとすることで妥協、反対を取り下げたためという。

 *http://www.rspo.org/resource_centre/GHG-emissions-from-palm-oil-DraftPublicCons.pdf

 これらの原則と基準は、EUの再生可能エネルギー指令に含まれる持続可能なバイオ燃料のGHG排出基準(EU再生可能エネルギー利用促進指令のバイオ燃料持続可能性基準(仮訳),08,12.26)を満たすために作られた。

 EU指令は、一定の時期以後に熱帯雨林や泥炭地から転換されたオイルオパーム農園由来のパームオイルを原料とするバイオ燃料はもちろん、このような土地利用転換の影響も含めた”ライフサイクル”のGHG排出量削減率(化石燃料に比べての)が35%以上のバイオ燃料しか持続可能と認めていない。

 ところが、EU指令が掲げる各種バイオ燃料の標準的なGHG排出削減率によると(土地利用転換は考慮外)、マレーシアやインドネシアがEUを主要市場することを狙うパームオイルディーゼルの削減率は、パームオイル製造工程で発生するメタン回収され、大気中に放出されないがぎり51%だが、製造工程が特定されない場合には(つまりメタン回収がなされていない一般的な場合には)16%にしかならないとされている。今のところ、マレーシアやインドネシアのパームオイル工場のほとんどがメタン回収装置を持たないから、このままでは、熱帯雨林や泥炭地の転換地で作られたものでなくても、ほとんどのパームオイルディーゼルはEU市場から締め出されてしまう。

 新たな原則と基準の追加はき喫緊の課題であったわけだ。新たな原則と基準は、化石燃料の使用、化学肥料の使用(オイルパームは大量の窒素肥料を必要とする)、メタン発生源となる工場の有機廃液を含む工場廃棄物、土地利用転換に伴う炭素ストックの変化などによるGHG排出を減らし、あるいは回避する手段や方法を定めるととともに、市場関係者がEUその他の政府が定めるGHG収支報告要件を満たせるようにすることを目指す。

 南米やアフリカのパームオイル生産者は、提案された自主的計画にいち早く参加したいと表明したということである。

 Malaysian, Indonesian palm growers withdraw objection to GHG criteria,Business Times,11.5
 http://www.btimes.com.my/Current_News/BTIMES/articles/rup404/Article/

  とはいえ、バイオ燃料原料となるパームオイルは、全体に比べれば、まだほんの僅かだ。食用油などとして利用される部分が圧倒的に多く、その世界需要は増え続けている。この需要を満たし、さらにバイオ燃料需要の増大に応えようとすれば、森林や湿地を新たに開拓するほかない。その最大のフロンティアであったインドネシアは、既に森林が丸裸になりつつある。パームオイル産業は、南米やアフリカの森林に手を伸ばしつつある。中国に至っては、コンゴ民主共和国に、日本の水田総面積をも上回る280万ヘクタールものバイオディーゼル用オイルパーム栽培用地を確保したと言われる。広大な熱帯雨林がオイルパーム農園に変わる。

 持続可能なバイオ燃料の基準を満たすためのGHG排出基準が作られ、実施されたとしても、パームオイル需要が増え続けるかぎり、森林や湿地の破壊、従って大量の炭素放出は止まらない。