スイス 地熱エネルギー計画を永久停止 容認できない地震のリスク 米国の大規模プロジェクトも停止へ

農業情報研究所(WAPIC)

09.12.14

 スイス・バーゼル市当局が12月10日、当地の地下深くから地熱エネルギーを取り出す大規模プロジェクトの永久停止を発表した。カントン(州)政府の研究が、掘削工事が引きこすリスク―地震―が大きすぎると公式に認めたためという。

 このプロジェクトは、二つの掘削機を使って地下5kmの熱い岩盤にまで水を注入、熱エネルギーを取り出そうとするものだ。しかし、掘削が始まると、地域は頻繁に地震に襲われるようになった。そのために、2006年末にプロジェクト一時停止の措置が取られ、20人の専門家が州委嘱の研究を進めてきた。その結果、地震の頻度と被害額の観点からして、物的損害は”容認できないと言われるべきだ”という結論になったという。

 掘削工事は、2006年から2007年の冬にかけて、何度も地震を引き起こした。最初の地震は2006年12月8日に起き、マグニチュード3.4だった。それから2007年3月21日までの間に、マグニチュード2.9〜3.2の地震が4回起きた。何らかの損害―基本的には壁にひびが入る―を引き起こした地震は2500回以上にのぼったという。

 Géothermie: une analyse de risques condamne le projet bâlois,Tribune de Genève,12.10
 http://www.tdg.ch/actu/suisse/geothermie-analyse-risques-condamne-projet-balois-2009-12-10

 地熱エネルギーは、少なくとも欧米では、風力、太陽よりも大幅に、小水力に比べてもコストが安い再生可能エネルギーとされている。温室効果ガス排出の低コストの削減策として、その開発を促進しようとする国や環境保護団体は多い。しかし、今回の決定は、スイスだけでなく、世界の地熱エネルギー開発の減速につながる恐れがある。

 米国エネルギー省の発表によると、「オバマ政府の化石燃料にとって代わるものとしての地熱エネルギーの最初の大きな試金石であり、連邦エネルギー省の資金の提供を受けた」サンフランシスコの北100マイルの場所でのGeysersと呼ばれるプロジェクトを実施するAltaRock Energy社は、スイスの決定の1日後の11日、省の地熱開発プログラムの一環としてのGeysersを放棄すると通知してきたという。

 Geothermal Project in California Is Shut Down,The New York Times,12.12
  http://www.nytimes.com/2009/12/12/science/earth/12quake.html?ref=science