バイオ燃料は輸送部門の温室効果ガス排出を増やす恐れ フランス初の公式研究

農業情報研究所(WAPIC)

10.4.12

  化石燃料(ガソリン、ディーゼル)に代えてバイオ燃料を使うことは地球温暖化の抑制に役立つのだろうか。4月8日、この問題に関するフランス初の公式研究がフランス環境・省エネルギー庁(ADEME)のウエブサイトで公表された。

 この研究は、輸入品も含め、フランスで使われる第一世代バイオ燃料(食料農産物を原料とするバイオ燃料、アグロ燃料とも呼ばれることがある)のライフサイクル全体を通しての温室効果ガス(GHS)排出を分析したものだ。その結論は、バイオ燃料は化石燃料に比べてGHG排出が少ないが、これはバイオ燃料の拡大が引き起こす土地利用の変化を無視するかぎりのことで、土地利用変化がもたらす大気中へのGHG放出を考慮すると、このGHG削減効果は帳消しにされ、かえってGHG排出が増えてしまう恐れさえあるということである。すでに多くの研究が確認してきたこの結論が、ここでも改めて確認された。

 ADEMZE:Remise de l'étude sur l'analyse du cycle de vie des biocarburants de 1ère génération.
 http://www2.ademe.fr/servlet/KBaseShow?sort=-1&cid=96&m=3&catid=16262&nocache=yes#biocarburants
 La synthèse du rapport (437.63 Ko)
 Le rapport dans son intégralité (2.46 Mo)
 Les annexes du rapport (869.92 Ko)
  Première revue critique (301.24 Ko)
 Deuxième revue critique (273.45 Ko)
 L'avis du comité technique (238.46 Ko)

 研究によると、フランスで消費されるバイオ燃料は、化石燃料に比べ、GHG排出が24%から91%少ない。バイオエタノールではGHG排出が50%から70%減る(最大はサトウキビエタノールの72%)。ただし、フランスではエタノールの代わりにETBE(バイオエタノールと石油ガスから造成される。日本石油連盟も、エタノールではなく、この利用に固執している)が使われることが多く、小麦またはトウモロコシからのエタノールで作られるETBEでは24%から31%削減されるだけである。バイオディーゼルではもっと大きく、60%から90%の削減が保証される。

 しかし、大量の炭素を蓄えることができ、破壊されるとこの炭素が放出される森林の農地への転換など、土地利用の変化の影響を考慮に入れると、様相は大きく変わる。たとえば大豆バイオディーゼル の場合、土地利用変化の影響を度外視すれば77%の排出削減となるが、熱帯林が大豆畑に転換される最悪の場合を想定すると、GHG排出はディーゼルの4倍から5倍になる。サトウキビやオイルパームの集約栽培に結ぶついた土壌劣化でも同様なことが起きる。

 2020年までに輸送用燃料の最低10%を再生可能燃料(その大部分はバイオ燃料で、2010年には化石燃料よりもGHG排出が35%以上少なく、2017年には50%以上少なくなければならない)に置き換えることを義務付けたEU再生可能エネルギー利用促進指令の最大の目的は、輸送部門からのGHG排出を大きく減らすことにあった。

 しかし、この研究発表を受け、3000近くの自然環境保護団体の連盟をなす”フランス自然環境”(FNE)の輸送問題責任者・Michel Dubromelは、「この結果は、アグロ燃料は、いかなる場合にも、道路輸送部門の温室効果ガス排出削減に向けた解決策にならないことを証明するの十分だ」と言っている。

 FNE:Agrocarburants : un bilan carbone désastreux pointé par l’ADEME,10.4.8
 http://www.fne.asso.fr/fr/agrocarburants--un-bilan-carbone-desastreux-pointe-par-lademe.html?cmp_id=33&news_id=1604&vID=1