2020年に持続可能なバイオ燃料200万キロリットル?! 温暖化対策中長期ロードマップの怪

農業情報研究所(WAPIC)

10.4.23

 今パブリックコメントに出されている「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップの提案〜環境大臣 小沢鋭仁 試案〜(平成22年3月31日 発表)」によると、2020年の温室効果ガス排出量を90年比で25%削減するという目標を達成するための一手段として、2020年には石油換算で200万キロリットル(KL)のバイオ燃料を導入するそうである。ただし、このバイオ燃料は「持続可能性を満たすもののみ」とするという。

 http://www.env.go.jp/earth/ondanka/mlt_roadmap/shian_100331/main.pdf

 こんな数字が、いったいどこから出てきたのだろうか。どんなバイオ燃料が「持続可能性を満たす」のか不明だが、温暖化対策として導入されるバイオ燃料であってみれば、化石燃料に比べて温室効果ガス排出がある程度以上少ないものでなければならないことは明らかだろう。そういうバイオ燃料を200万KLも、どうやって調達するというのだろうか。

 この試案発表に先立つ3月5日には、環境省もオブザーバーとして参加した経済産業省の「バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会」(座長:横山伸也東京大学大学院教授)が中間とりまとめ報告書を発表している。

 http://www.meti.go.jp/press/20100305002/20100305002-2.pdf

 検討会は、CO2削減効果に関するバイオ燃料の持続可能性基準を、ガソリンのCO2排出量に比べてライフサイクルで50%以上削減することするのが妥当としている。そして、この基準を現在満たすのはブラジル産の既存農地のサトウキビを原料とするエタノールと、てんさい、建築廃材を原料とする国産エタノールだけだという。実用化・商業化に伴い改善が進む可能性はあるが、実証段階の現在、多収量米、ミニマムアクセス米、規格外小麦、廃糖蜜を原料とするエタノールはすべてこの基準を満たさない。ブラジル産サトウキビ由来でも、森林を開発した場合にはガソリンの約3倍のCO2を排出する。

 その上で、ブラジル産の既存農地分のエタノールの輸出拡大には相当の限界(原油」換算で20万KL)があるとした。また、国産バイオ燃料の2020年の生産可能量については、セルロース系エタノール61万KLを含め72万KL(原油換算で約40万KL)と試算している。つまり、輸入品を含め、原油換算で60万KLを供給するのが関の山ということだ。どうして200万KLなのだ。

 ひょっとして、このロードマップ全体がこのような傷だらけかもしれないと疑われる。