藻由来のバイオディーゼルに品質上の重大な欠陥 米農務省研究者が開発熱に冷水

農業情報研究所(WAPIC)

10.5.8

 食料作物や栽培に広大な土地を要する植物を原料とする現在主流のバイオ燃料については、食料安全保障を脅かす、温室効果ガス排出を削減するどころか却って増やしてしまう恐れがあるなどの批判が高まるばかりである。そうしたなか、このような問題を解決する藻を原料とするバイオ燃料への期待が高まっている。

 たとえば、日経Automotive Technologyの最新記事は次のように言う。

 「経済産業省は2010年3月5日、バイオ燃料でも「LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)で計算したCO2削減量が50%以上ないとカーボンニュートラルとは認めない」という方針を打ち出した。これは厳しい基準で、ブラジルの既存の農地で作るサトウキビ、国内の甜菜(てんさい)、建築廃材から作った燃料しかカーボンニュートラルとは認められなくなる。今のところ経済合理性だけでは成立せず、助成や補助に頼っているバイオ燃料にとって、カーボンニュートラルと認められるかどうかは採算性を左右する。森林を切り開いて燃料用植物を栽培するというビジネスが成立しなくなってきた。
 こうした問題を藻が解決する。藻を栽培して燃料を作るという技術が、生物学の段階から、エンジニアリングの段階に進んだ。オランダShell社、米Exxon Mobil社といったオイルメジャー、米Dow Chemical社のような化学品メーカーが既に開発に着手。ExxonMobil社は6億米ドルを超える額を投資するという力の入れようだ。米国には約200社のバイオベンチャーがあり、藻の栽培、燃料化にリスクマネーが殺到している。」

 http://techon.nikkeibp.co.jp/article/HONSHI/20100329/181411/

 ところが、米国農務省農業研究局(ARS)の化学者であるGerhard Knotheが、こうした開発熱に冷水を浴びせている。彼によると、藻を原料とするバイオ燃料の開発ラッシュは燃料の特性にほとんど注意を払っていないが、その点に注目すれば、この燃料は既存の燃料、バイオ燃料と競争できない。

 彼の研究は、ほとんどのではないにしても、多くの藻由来バイオディーゼルには低温での流動性に関して”重大な問題”があり、また他のバイオ燃料に比べて簡単に劣化することを発見した。これは、バイオディーゼルの原料となる藻の油が多量の飽和及び多価不飽和脂肪酸を含むためという。

 これでは、藻由来バイオディーゼルの多くが自動車燃料として使いものにならない恐れがある。ブラジル・パラナ連邦大学の化学者であるLuiz Pereira Ramosも、Knotheは”絶対に正しい。今までに調査した藻由来バイオディーゼルの大部分は燃料としての利用に適していない”と言う。

 両化学者は、もっと有用な特性を持つ油を産生する遺伝子組み換え藻に期待をかけることはできるとする。しかし、その実現ははるか先のことになるだろうということだ。

 Biofuels from algae plagued with problems, says review,SciDev,5.7
 http://www.scidev.net/en/news/biofuels-from-algae-plagued-with-problems-says-review-1.html