中国、インドガンがH5N1ウィルスで大量死 全国でワクチン接種を含む拡散防止措置

農業情報研究所

05.5.23

 今月10日、China Daily紙が、中国西部・青海湖で先週来、中国で第二クラスの希少動物・bar-headed geese Anser indicus、インドガン)約180羽が死んでいるのが発見されたが、死因はミステリーと報じた(http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-05/10/content_440540.htm)。インドガンは、冬はインドなどの南アジアで越冬、春になると中央アジアの沼地に渡って繁殖を行う渡り鳥という。5月4日に青海省北西部の青海自然保護区のスタッフが湖西岸近くのバード・アイランドで19羽が死んでいるのを発見した。8日までには178羽が死んでいるのが見つかったという。試験所での最初の研究では、鳥インフルエンザやその他の厳しい感染症の可能性は排除された。環境活動家は、人間活動が野鳥の生息環境を大きく変え、繁殖活動に影響を与えており、農薬と狩猟が渡り鳥の大量死の原因だと語っていた。

 ところが、先週土曜日(21日)、農業部がこの大量死はH5N1鳥インフルエンザによるものであることを国家鳥インフルエンザ基準試験所が確認したと発表した(http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-05/21/content_444592.htm)。農業部は人間や家禽には広がっていないが、感染の広がりを防ぐために、青海省は現場を封鎖する緊急措置を取ったという。しかし、広範な移動範囲をもち、その移動が制御不能な渡り鳥がこのウィルスを拡散させているとすれば、これだけでウィルス拡散は防げないだろう。

 21日のxinhua(新華社)ニュースは、農業部がウィルス拡散を防ぐための緊急措置を全国に拡大したと伝えている(http://news.xinhuanet.com/english/2005-05/21/content_2985222.htm)。それによると、農業部はインドガンの大量死は東南アジアから移ってきたウィルスによるものと確認、国家鳥インフルエンザ基準試験所は、このウィルスが中国に拡散しているものと異なり、東南アジアで発見された鳥インフルエンザは一層致死的で、人間に感染する遺伝子を含む恐れがあると言っている。その拡散を防ぐために、渡り鳥に新たに確認されるケースに注意を続け、あり得る拡散を防ぐ有効な措置を取るように全国に求めた。中国全体の獣医機関に対し、各地の渡り鳥の種と生息域を知るために、地方森林部と接触するように要請した。

 農業部は、すべての地域が渡り鳥棲息地への人の立入を禁止し、家禽との接触を止めるべきだ、国中の誰もが疫病の監視を強化、早期警戒システムを改善せねばならないと言う。河川と湖、あるいは水棲家禽が頻繁に訪れる渡り鳥の棲息地と渡りのルートが中心的監視地点となる。異常な病気や死はできるかぎり速く報告されねばならない。また、渡り鳥の生息地と渡りのルートやそれに近い大規模家禽農場の家禽に強制ワクチン接種も要請した。

 ただし、基準試験所の専門家は、中国は成熟した鳥インフルエンザの診断・監視・予防システムを持っているから、人々は過剰に心配するには及ばない、政府は有効な措置を取ってきたから、新たなケースはコントロール下に置くことができると言っている。今回のケースは、50のケースをコントロールするのに成功した昨年以来、中国で初めて報告されたH5N1のケースだ。今年1月27日から3月16日まで、16の省・自治体・自治区で49の鳥インフルエンザのケースが確認されたが、致死的ウィルスは1ヵ月ほどで抑えられたという。

 今日(23日)のChina Daily紙の報道によると、土曜日の確認後、青海省には直ちにH5N1ウィルスに対する300万のワクチンが配られた。省全体の家禽への強制接種が目標と言い、大量死が発見された海省剛察県泉吉郷の年乃索麻村が最初に受け取った(http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-05/23/content_444759.htm)。

 (この記事は、当研究所の意見をいささかなりとも含むものではありません。中国メディアが報じる中国当局の見方と対応をそのまま伝えるものです。ただ、インドガン自体の日本の渡来は稀なようですが、渡り鳥のH5N1ウィルスによる大量死という事実は、日本の対策の再考も促がす重要な要因にはなると考えられます。)