インドネシア 人間初の鳥インフルエンザ死を確認

農業情報研究所(WAPIC)

05.7.20

 今月はじめに死亡、鳥インフルエンザが原因と疑われていたジャカルタ郊外に住む家族3人がH5N1型鳥インフルエンザに感染していたことが最終的に確認された。20日付けのジャカルタ・ポスト氏がAP/AFPを情報源として伝えるところによると、今日水曜日、シティ・ファディラ・スパリ保健相が、香港の試験所の検査で確認されたと発表した(Indonesia confirms first three human deaths from bird flu,The Jakarta Post,7.20)。

 3人は38歳の男性とその2人の娘(9歳と1歳)である。インドネシアで初めての鳥インフルエンザ死となる。3人が鳥に直接接触した形跡が見つからないことから、人から人への感染が起きたのではないかの疑いも出ていたが、この点については記事は何も触れていない。今後調査が進むだろう。

 これにより、2003年以来アジアを襲っているH5N1ウィルスによる死者は、べトナムで38人、タイで12人、カンボジアで4人、これにインドネシアの3人を加え、計57人となった。恐れられている人から人への感染の証拠は未だ確認されていない。

 なお、今月はじめには、マニラでフィリピン初めての鳥インフルエンザが確認された。OIEが定める90間の監視期間を終えて終息宣言を出す矢先、タイでも再発した。さらに、4月以来大量の野生渡り鳥がH5N1ウィルスで死んでいる中国については、野鳥は家禽から感染するという定説を覆し、野鳥間で感染が起きているという中国研究者による研究がサイエンス、ネイチャーの両誌に発表された。ウィルスが変異 が進んでおり、人から人に移るようになるのも時間の問題と見られている。同時に野鳥の移動範囲からして、こうしたウィルスがインド、オーストラリアから果てはヨーロッパにまで運ばれる可能性が指摘されている。

 昨日のワシントン・ポスト紙は、中国がサンプル・情報・データの共有を拒否しており、こうした問題の解明と対策が進まないと訴えるWHO専門家の不満の声を掲載した(China Has Not Shared Crucial Data On Bird Flu Outbreaks, Officials Say,The Washington Post,7.19)。しかし、この病気は既に人間の制御できないものになっている恐れがある。対照療法で重症化を防ぐ以上の手段が見つかるかどうか疑わしい。