中国四川省で正体不明の病気 当局はSARSや鳥インフルエンザでは絶対にないと主張するが

農業情報研究所(WAPIC)

05.7.26

  xinhua.netが23日、過去4週間の間に中国四川省で20人の村民が原因不明の病気に罹り、うち9人が死亡したと報じた。州保健当局が確認したもので、保健部と農業部の専門家が医療援助を提供、疫学調査を行うことになるという(Unknown disease claims 9 lives in Sichuan,xinhua.net,7.23;http://news.xinhuanet.com/english/2005-07/23/content_3257310.htm)。

  資陽市の三つの病院が類似の症状を持つ20人の患者を受け入れた。患者はすべて、はじめは高熱、衰弱、吐き気と嘔吐の症状を示し、後に皮下の変色を伴う昏睡状態に陥った。21日までに9人の患者が死亡、1人は回復して退院した。10人は治療中で、うち6人は重症と発表された。

 19人の男女患者はすべて30歳から70歳までの15の村の農民で、病気になる前に病気の豚または羊をと殺していた。ただし、発見されたケースは相互に関連がなく、患者間の緊密な接触は発見されていない。専門家は病気の動物や死んだ動物に曝されたことが主な原因と疑っているが、医療関係者が正確な病因を決定するために試験所検査を行っているということであった。

 続く24日の報道では、死亡農民は17人、ほかに患者が41人になった(Death toll from unknown illness rises to 17 in Sichuan,xinhua.net,7.24http://news.xinhuanet.com/english/2005-07/24/content_3261256.htm)。地方病院は過去4週間に資陽市とその隣の内江市の49の村落から58人の患者を受け入れた。すべては前に報じられたと同じ症候を示し、病気になる前に病気の豚か羊をと殺していた点も同じである。2人が回復、12人が重症状態で、27人の症状は安定しているとされていた。

 さらに25日付けのxinhua.netは、China Daily紙をソースとする情報として、省保健部の高官であるZeng Huajin氏が、この病気はSARSでも、炭そ病でも、鳥インフルエンザでも絶対にない、一層の研究が必要だが、豚由来の連鎖球菌(Streptococcus suis)によって引き起こされた可能性が高いと語ったと伝える(Strange disease kills 17 in Sichuan Province,xinhua.net,7.25;http://news.xinhuanet.com/english/2005-07/25/content_3262105.htm)。( 日本でも、稀ではあるが、類似の症状を呈する豚由来連鎖球菌による髄膜炎の症例はあるようだ→http://www.kansensho.or.jp/journal/full/200305/077050340j.pdf

 しかし、この問題を取り上げた25日付けのネイチャー・ニュースは、世界保健機関(WHO)の西太平洋地域事務所(マニラ)スポークスマン・Bob Dietz氏が、鳥インフルエンザやSARSを含めたあらゆる病気のどれかでありうるが、率直に言って、一層大きな問題はそれが何か分からないことにあると語ったと伝える(Mysterious disease spreads in China,news@nature,7.25;http://www.nature.com/news/2005/050725/full/050725-1.html)。

 この記事によると、Zeng Huajin氏は、この病気はSARSでも、炭そ病でも、鳥インフルエンザでも絶対にない、豚由来の連鎖球菌によって引き起こされた可能性が高いと主張しているが、病気発生に関する情報を広めるサービスであるProMEDのメーリングリスト上で見解を共有する科学者や医師たちは、症状が中国南部の一部に広がるクリミア・コンゴ出血熱CCHF)に似ていることを示唆している。これは致死率が高いマダニが媒介する病気だが、人から人には広がらないから人間への感染リスクは限られているという。ただし、科学者たちは、鳥インフルエンザの危険にもなお警告しているとも言う。