WHO、中国四川の奇病で最新発表 豚レンサ球菌病因論の有効性を確認

農業情報研究所(WAPIC)

05.8.20

 世界保健機関(WHO)が17日、中国保健部と国際専門家グループが、四川省における人間の奇病の最近の勃発が豚レンサ球菌病因論に合致すると発表した。病気の正体をめぐる議論はこれで終息ということであろうか(http://www.wpro.who.int/media_centre/news/news_20050816.htm

 発表によると、中国保健部はこれまでに215人の感染を報告、うち39人が死んだ。8月5日以来、新たな発生はない。7月第2週から第4週にかけて発生は峠を越え、以後急速に退潮に向かった。

 初めは腎臓症候群を伴う出血熱が疑われたが、中国試験所検査がこの疑いを排除した。その後、高熱、吐き気、嘔吐、髄[脳]膜炎、皮下出血、毒素性ショック、昏睡などの症状を示す多くのケースが報告された。ほとんどすべての患者は農業と食肉解体処理を職業とする者で、その80%は病気の豚を殺すか、その肉を加工・販売してきた男性だった。患者の40%は50歳から60歳に属した。

 中国の試験所検査は、数人の検査標本ので検査で、豚レンサ球菌感染を確認した。同時に進められた中国農業部の調査で、地域の豚に豚レンサ球菌の存在が発見された。中国当局の人間の検査では他のいかなる病原バクテリアも発見されなかった。豚ではインフルエンザとニパウィルスへの感染も考えられたが、この可能性も排除された。

 中国当局は、今までの調査に基づき、人間から人間への伝達の証拠はなく、患者の看護要員は誰も感染しなかったとしている。しかし、中国保健部は、特に以前の発生に比べて非常に多くの死者が出たことも含め、これほど大規模な発生となった理由を決めるために、一層の研究に取り組むことが必要だとしている。

 他方、豚レンサ球菌に関する国際専門家グループは、8月9日に電話会議を開いたが、中国試験所の豚レンサ球菌確認の有効性に関する懸念は表明されなかった。臨床症候についても、人間に強毒性の豚レンサ球菌の一つまたは複数の株で説明できると感じたという。

 専門家は、これは人間には稀な病気と強調した。1960年代に初めて人間に確認された。以後、世界中で少数の発生が報告されてきた。

 専門家は豚レンサ球菌のゲノムの20%から30%の機能はなおはっきりしていないことに注目した。今回の発生に関連した株と過去の中国及びその他の国での発生に関連した株の比較するために、四川のサンプルの一層の検査が有益と示唆し、中国当局もこのような研究に熱意を示した。

 専門家は、血液などの感染物質に非常に緊密に接触しないかぎり、人から人への伝達は起こりそうもないと語った。また、関係した豚レンサ球菌の株が一層強毒性のものであっても、生や調理不十分の豚肉の消費は病気につながりはするものの、適切に調理された豚肉を食べてもリスクが増えることはありそうもないと強調した。

 発生の国家的・国際的拡散の可能性に関しては、専門家は、発生地域内部での、また発生地域からの生きた豚・豚屠体と肉の移動が注意深く規制され、監視されねばならないことで中国当局と一致した。中国は、これを確保するために、厳格な措置を取ったと言う。

 WHOは、中国保健部がWHOに規則的に新たな情報を提供してきた、中国保健部の支持で今後も状況の監視を続けるとしている。