欧州諸国 H5N1鳥インフルエンザ侵入対策に大童、日本は?

農業情報研究所(WAPIC)

05.8.20

 先日伝えたように、H5N1鳥インフルエンザがウラルまで西進、渡り鳥の移動により、この秋にはヨーロッパにまで広がると恐れれている(鳥インフルエンザ 渡り鳥がはるか遠方にも拡散させる可能性,08.16)。ロシア当局はヨーロッパへの拡散を防ごうと、大量の野鳥狩りに走っている。しかし、それで拡散を防ぐのはほとんど不可能だろう。野鳥の感染をコントロールするのも実行不可能だ。野鳥から家禽、家禽から人に移るのを防ぎ、万一人が感染した場合には早期に発見、蔓延を防ぐしか対策はない。

 ヨーロッパ諸国は家禽と人間への拡散を防止する緊急措置の導入に大童だ。

 英国保健省は、もしこのウィルスが人から人に伝わるように変異すれば、英国でも5万人から6万5000人の死者が出ると予想、来週、全家庭医や初期医療関係者に50頁のインフルエンザ流行解説書と患者配布用のパンフレット50部を早急に送ることを決めた(GPs to get drill for bird flu pandemic,FT.com,8.18)。

 オランダ政府は、15日、野鳥と家禽の接触を防ぐために、すべての家禽を屋内で飼うように強制することを決めた。ドイツ政府も同様な計画を決めた。ドイツは、ロシアから入国する旅行者をチェック、病気が発見された場合に隔離する空港管理も考えている(New Fowl Guidelines Aim to Check Bird Flu,DW-World,8.19;http://www.dw-world.de/dw/article/0,1564,1684875,00.html)。

 EU諸国は対応を協議するための会合を来週に予定している。わが国はH5N1鳥インフルエンザの世界的蔓延に対してどんな対応を考えているのだろうか。マスコミも総選挙の話題ばかり、これについては何一つ報じようともしていない。欧州が狂牛病パニックに陥っていたときとまったく同様だ。また後で大騒ぎするのだろうか。政府は何もしなかったと。

 なお、17日には黒海とカスピ海に挟まれたロシア連邦カルムイキア共和国でも家禽の死が報告されたが、これは他の寄生虫病による死と確認された(Canada.com,8.21;http://www.canada.com/health/story.html?id=f5698a43-460b-41dc-a0c4-80cb6042b0d8)。また、モンゴルの野鳥の大量死については、米国農務省が正式にH5N1鳥インフルエンザによるものと確認した(EurekAlert! ,8.19;http://www.eurekalert.org/pub_releases/2005-08/wcs-bsf081805.php)。