インドネシア H5N1鳥インフルエンザ死者6人に 封じ込めは期待できない様相

農業情報研究所(WAPIC)

05.9.26

 7月に3人(父と子供)、今月に入りジャカルタ郊外の動物園の鳥、一人の女性のH5N1鳥インフルエンザ死が確認され、一週間前にジャカルタ地域に非常事態宣言が出たインドネシアで、新たに子供と成人女性のH5N1鳥インフルエンザ死が確認された。7月以来、6人の感染死が確認されたことになる(Indonesia bird flu toll increases,BBC,9.26:http://news.bbc.co.uk/2/low/asia-pacific/4281794.stm;Bird flu claims two more lives in Indonesia,NewScinentist.com,9.26;http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn8055)。

 WHOは、サーベイランスの強化の結果として潜在していたものが現れただけで、ウィルスもまだヒトーヒト感染の能力をもつように変異していないとパニックの沈静に努めている。

 だが、感染場所から半径3km以内の家禽の大量殺処分を要請するWHOの勧告の実行を補償金支払いの財政能力がないと無視し、ワクチン接種で切り抜けてきた政府は、非常事態後にも「病気を封じ込めるための措置をほとんどとっていない。ウィルスが命を奪った地域の鶏の大量殺処分はないし、他方では養鶏農民がワクチンの不足を訴え始めた」(Flu vaccines low, farmers get jitters,The Jakarta Post,9.26)。インドネシアがこの致死的鳥インフルエンザを封じ込めるのはほとんど期待できない様相だ。

 2週間前に1400羽が急死した東ジャワの町の養鶏農民は鳥インフルエンザワクチンの供給制限にいらだっている。町当局のスポークスマンは、3万羽分のワクチンしかなく、200万羽が放置されたままと言う。以前に287万羽分を受け取ったが、農民への配布後、たちまち底をついてしまった。彼は、「さらに200万羽分が無料で配布されるように求めてきた。農民は、昨年の勃発の間に処分の補償を受け取らなかったから、無償配布を必要としている」と言う。

 スラウェシ南東部も800万以上の鶏のワクチン不足に直面している。当局は最近の1200羽の急死の後に18万2000羽分を配布したにすぎない。

 国全体では10億の鶏と2億9000万のフリーレンジの鶏がおり、その60%はジャワに集中している。

 大量殺処分を回避、ワクチン戦略に頼るとしても、これだけの大量の鶏にワクチンを接種するなど、インドネシアならずとも実際に可能なのであろうか。人為では制御不能なほどに鶏は増えてしまった。

 それでも、ラマダンを控え、鶏需要は減るどころか、増加が予想されるという(Ramadhan could increase poultry demand, The Jakarta Post,9.26)。我々は、インドネシア発の”パンデミック”を恐れねばならないのだろうか。