インドネシア政府 鳥インフルエンザ封じ込めのための鶏大量殺処分は実行不能

農業情報研究所(WAPIC)

05.11.14

 世界銀行はインドネシアにおける鳥インフルエンザ勃発を止め、人間の感染を減らすために鶏の大量殺処分に要する資金を提供すると決めた。しかし、マスコミ報道によると、政府は、大量殺処分は実行不能と、なお積極的対応をためらっている。アントン農相は、「大量殺処分は鳥インフルエンザ・ウィルス根絶の有効な方法ではないから」、政府は大量殺処分実行する必要はないと語ったという。

 Mass cull unfeasible: Minister,The Jakarta Post,11.12
 http://www.thejakartapost.com/yesterdaydetail.asp?fileid=20051112.@02

 農相は11日(金)の閣議出席を前に、「大量殺処分が勃発を防ぐ唯一の方法ではない。ウィルスと戦う我々の方法は正しい軌道に乗っており、我々はその規模を拡大する必要があるだけだ」と語った。彼は、利益を失う養鶏農民に十分な補償を提供できないから、大量殺処分は深刻な社会不安を引き起こすと説明する。ジュネーブの国際会議に出席した彼は、「インドネシアの多くの家庭は家の周りを自由に歩き回る鶏を飼っている。大量殺処分の社会的影響は大きすぎる。大量殺処分は、既に流行している地域ではなく、新に感染した地域でのみ有効だ」と明かした。

 農業省は、感染地域の半径3km以内のすべての鳥を完全に処分するのがウィルスと戦う最善の方法と認めている。しかし、省は、このような選択的殺処分でさえ、”余りに高くつく”と考え、有効に実施せず、動物へのワクチン接種を優先してきた。しかし、科学者は感染した鳥と人間の接触の継続はウィルスの変異を引き起こし、致死的なインフルエンザの世界的蔓延につながる恐れがあると警告している。インドネシアだけでも、過去10ヵ月に5人 [これはWHOが公式に確認した数字。インドネシア政府は今日現在で7人としている]の鳥インフルエンザ死が確認されいる。

 従って、農民に補償する十分な資金がないというインドネシア政府の言い分に応え、世銀のウォルフォウィッツ総裁は12日、ユドヨノ大統領に大量殺処分の資金援助を申し出た。ジュネーブの会合では、農相は、勃発と戦うには来るべき2年間に1億3000万ドルが必要だが、来年のこのための国家予算は2000万ドルしかないと訴えた。会議中、米国、ドイツ、日本も、政府が勃発を封じ込める努力を強化すするのを助けるべく、最低1000万ドルの贈与を約束した。

 しかし、農相は、勃発は国際問題であり、ウィルスはインドネシア起源のものではないからと、ローンの形での海外資金を求めることを拒絶したと強調する。彼は、「我々は海外資金援助を求めることをためらわない。しかし、援助が負債の形になることは望まない。それは我々の将来の負担となるからだ。鳥インフルエンザは世界的問題であり、我々は諸国がこれを封じ込めるための贈与資金を与えることを望む」と力説、さらに、利用できる資金は、鳥インフルエンザの新たな勃発を局地的にとどめ、感染地域を消毒し、選択的殺処分を行い、また地域の畜産当局がウィルスの拡散を妨げる能力を強めるのに十分と思う」とも言う。

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