渡り鳥はアフリカに鳥インフルエンザウィルスを運ばなかったー専門家が結論

農業情報研究所(WAPIC)

06.5.11

 インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(ヨーロッパ)紙の報道によると、昨年秋にアフリカに渡り、最近になってヨーロッパに戻った渡り鳥の群れがH5N1鳥インフルエンザウィルスを運ばなかった、あるいは渡りの間にそれを拡散させなかったと結論した。国際保健当局者は、病気が南方への渡りの間にアフリカに拡散し、この春の逆方向への移動の間にヨーロッパに戻って来ることを恐れていた。しかし、予想に反し、これは起こらなかったという。

  Birds back in Europe without flu,International Herald Tribune:Europe,5.11
  http://www.iht.com/articles/2006/05/10/news/flu.php

 保健当局者と科学者は、この冬、アフリカで数千の野鳥のサンプルを集めたが、H5N1ウィルスはまったく発見されなかったと言う。またヨーロッパでも、北への渡りが最高潮になる4月1日以来、僅かな野鳥の感染のケースが発見されただけだ。国際獣疫事務局によると、ヨーロッパのケースは、毎日数十の新たなケースが発見された2月に比べて急減した。デンマークの一羽のカイツブリ、ドイツの一羽のハヤブサ、フランスの数羽の白鳥の感染が発見されたにとどまる。そのために、多くの国が家禽の屋内閉じ込めの規制を解除しつつある。

 国連食糧農業機関(FAO)の代理を務める国際湿地保全連合(Wetlands International)の鳥インフルエンザ専門家であるWard Hagemeijer氏は、この冬、7500のアフリカの野鳥のサンプルを集めたがH5N1ウィルスは発見されなかった、従って春の移動に伴いヨーロッパに戻らなかったのは驚くに当たらないと言う。

 鳥インフルエンザは、エジプト、ナイジェリア、スーダンなどいくつかのアフリカ諸国の農場の家禽で大問題になってきたが、専門家は、ますます輸入された家禽や家禽製品を通じて侵入したのではないかと疑うようになっている。Hagemeijer 氏は、野鳥のウィルスの強さは南方への渡りのシーズンが進むに連れて弱まった可能性がある、これはより危険が少ない鳥インフルエンザウィルスに共通に見られる特徴で、多分、そのためにアフリカでの拡散が制限されたのだと見る。彼は、大抵の場合、それは北から南に広がる傾向があり、その後弱まると言う。

 しかし、これは、水の中で長期間生きているウィルスが営巣地域に存続するとすれば、この夏にはサイクルがまた始まる可能性があることを意味する。多くの専門家は、中央アジアとロシアの少数の湿地湖沼は常時ウィルスを宿しており、ヨーロッパや中央アジアでの感染源となっていると信じている。だが、科学者は、どのような鳥がウィルスをそれと知られずに運ぶのか、直ぐに死んでしまうのか、どのようにして野鳥から野鳥へ、あるいは野鳥から家禽に広がるのか、まだ分かっていない。

 農場での鳥インフルエンザは多くの国で常に勃発しており、先週はアイボリー・コーストの農場での勃発を見た。1月にナイジェリアの農場で勃発したときには、多くの専門家が地域の農場と野鳥に急速に広がると予想した。しかし、一見したところ、そうはならなかった。

 FAOのJuan Lubroth上級獣医官は、「何故ナイジェリアからベナン、セネガルまでの沿岸全体に広がらなかったのか?何故アフリカの大湖を襲わなかったのか?我々すべてがウィルスの少しばかりのスナップ写真を持つだけだ。我々に必要なのはそのライフサイクルのムービーだ」と語ったという。