FAO、OIE、WHO、WTO 豚肉製品は安全だが豚は監視すべきと共同声明

農業情報研究所(WAPIC)

09.5.3

  5月2日、FAO、OIE、WHO、WTOが、衛生規範に従って取り扱われる豚肉製品は感染源にならないという共同声明を出した。

 メキシコと米国で発生した新たな人→人感染インフルエンザに”豚インフルエンザ”という名が付けれたことから豚肉の安全性に対する不安が広がったとし、EUはこの新たなインフルエンザウィルスを”目新しいインフルエンザウィルス”(novel flu virus)と定義、OIEは”北米インフルエンザ”の名を提唱、WHOは”インフルエンザA/H1N1”(nfluenza A/H1N1)と呼び代えたものの、世界の豚肉消費の減少は止まらず、中国、ロシアなど一部の国が米国やメキシコからの豚製品輸入禁止に走っている。これに腹を据えかねての共同声明だろう。

 声明は、FAO/WHO食品規格委員会とOIEが勧告する適正衛生規範に従って取り扱われる豚肉と豚肉製品は感染源にはならない、今までのところ、ウィルスが食品によって伝達される証拠はなく、従って豚、またはその製品の輸入に対する貿易措置を課すことは正当化されない、と言う。

 ただし、獣医当局は、A/H1N1インフルエンザの人間のケースとの関連が疑われる異常な病気の兆候がないかどうか、人間の保健当局と共同して豚を監視すべきであるとも付言している。

 Joint FAO, OIE, WHO and WTO statement on A/H1N1 virus,FAO,5.2
 http://www.fao.org/news/story/en/item/19349/icode/

 豚インフルエンザの名前は代わっても、また豚がこのインフルエンザに感染した証拠は見つかっていないとしても、このインフルエンザが豚インフルエンザに由来する可能性は否定できない。そして、豚が鳥インフルエンザを含む動物のインフルエンザを人から人に感染するインフルエンザに変身させる”容器”となることを考えれば、名前の変更や豚・豚肉製品の安全性の強調が豚の監視を緩めさせることにつながってはならないだろう。豚肉産業の保護のために安全が犠牲になるとすれば、本末転倒だ。