豚インフルエンザウィルスは肺、腸にまで浸透 季節インフルエンザとの違いを説明する新研究

農業情報研究所(WAPIC)

09.7.3

  ネイチャー・ニュースによると、別々のグループによる二つの研究が、豚インフルエンザウィルスは呼吸器系の深くまで、そして腸にさえ浸透できることを発見した。この発見により、豚インフルエンザの症状が通常の季節性インフルエンザと何故異なるのか説明で きるという。

 Swine flu reaches into the lungs and gut,Nature News,7.2
 http://www.nature.com/news/2009/090702/full/news.2009.617.html

 二つの研究グループは別々に、症状も、その持続期間も人間と似ているフェレット(白イタチ)を使って、A(H1N1)インフルエンザウィルスがどれほど有害か、またどれほど伝染しやすいかを調査した。

 一つは、米国・アトランタの疾病抑制予防センターのTerrence Tumpey博士が率いるチームの研究で、三種の異なる豚インフルエンザウィルスと、一種の季節インフルエンザウィルスをフェレットの鼻に垂らした。フェレットの一部は非感染フェレットと同じケージに入れ、別の一部は、他のフェレットのケージと行き来はできないが呼気は通う別のケージに入れた。

 この実験では、豚インフルエンザウィルスに感染したフェレットは、通常のインフルエンザウィルスに感染したフェレットよりも体重が落ち、豚インフルエンザウィルスは、通常のインフルエンザウィルスよりも肺の下部に、一部のケースでは腸にまで浸透した。これは、一部患者が吐き気や下痢を起こした人間での観察と符号する。

 第二の研究は、ロッテルダムのエラスムス大学医学センターのRon Fouchier博士が率いるチームのもので、この実験でも、ウィルスは肺にまで浸透した。

 他方、Tumpey博士の研究では、豚インフルエンザウィルスは季節インフルエンザウィルスほどに伝染性は強くなかったが、Fouchier博士の研究では同じほどの伝染性が示された。この違いは、豚インフルエンザウィルスのサンプルの違いか、フェレットの違いから来たのではないかという。Tumpey博士は、ウィルスの伝染失敗は、このウィルスが新しいホストに適合するために未だ変身中であることを示す、「既に人間に完全に適合しているとは思わない」と言っているそうである。

 このウィルスは、大多数の場合は重症を引き起こしていないが、これは変化するかもしれない。どちらの研究も、特に北半球の冬の豚インフルエンザに注意を向ける必要性を強調している。Tumpey博士は、「我々は、ウィルスが病気を引き起こす能力を増すかもしれないと恐れている」と言う。

 ロンドンの国立医学研究所のウィルス学者、John McCauley博士は、この二つの研究は科学者が将来の豚インフルエンザを監視するのを助ける、今後現れるであろう変異株と比較するための”ベースライン”を提供すると言う。