米国の新型インフルエンザ 集中治療室入り妊婦100中の27人が死亡

農業情報研究所(WAPIC)

09.10.3

  H1N1新型インフルエンザは、当初考えられていたほど穏和ではないかもしれない。

 米国疾病管理予防センター(CDC)の10月2日の報告によると、新型インフルエンザ勃発から4ヵ月の間に感染した妊婦100人が集中治療室に収容され、うち28人が亡くなった。米政府のパンデミック対応を助けているCDCのアン・シュチャット医師は、週ごとの定例のブリーフィングで、「我々が見ているのは、まったく衝撃的なことだ」と語った。

 この新型インフルエンザ勃発まで、病院は、子供の場合は除き、インフルエンザによる死を当局に報告することを義務づけられていなかった。従って、季節的インフルエンザに罹った妊婦の致死率は分かっていない。

 彼女によると、新型インフルエンザによる致死率が高いのは、注意がこれに集中していることの結果にすぎないのかもしれないが、「国中の医者が、こんなことは今まで見たことがない」(必ずしも確かな裏づけがあるわけではないが)と言っているという報告もある。

 以前の大部分のパンデミックにおいても、妊婦の致死率は異例に高かった。1918年、スペイン風邪に感染した1350人の妊婦の27%が死亡した。1957年のアジア風邪では、感染死したミネソタの再生産年齢婦人(妊娠・出産可能な年齢の婦人)の半数が妊婦だった。

 CDC Reports 28 Flu Deaths Among Pregnant Women,The Washington Post,10.2
 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/10/01/AR2009100104308.html?wpisrc=newsletter

  H1N1新型インフルエンザの致死率は季節性インフルエンザの致死率と変わらない のだから「冷静に」という言い方が流布している。しかし、集中治療室に入っても3人に1人は死ぬと聞いて冷静でいられる妊婦がいるだろうか。インドでは致死率が3%を超えている(インドにおける新型インフルエンザ(H1N12009)感染者数・死者数(グラフ))。このインフルエンザウィルスについては、未だ分からないことの方が多い。致死率の低さよりも、まずそのことこそ強調されてしかるべきではなかろうか。

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