タミフルはインフルエンザ合併症を防げるか?

農業情報研究所(WAPIC)

09.12.9

 タミフルがインフルエンザにかかった成人の合併症を防ぐという明確な証拠はない。研究は、タミフルが症状の継続期間を1日程度縮めるぐらいの”少しばかりの”効果はあることを示しているが、肺炎のような重大な合併症を防ぐという証拠は得られない。British Medical Journalに掲載されたタミフルの効能や副作用に関する以前の研究の最新のレビュー*がこのように結論している。

 レビューは、タミフルを製造するロシュ社の研究の有効性に強い疑いを投げかける。この記事を掲載したBMJ誌の編集者によると、例えば、タミフルが肺炎などのインフルエンザ合併症を減らすとしたLaurent Kaiser等の以前の研究**はロシュ社が資金を提供したもので、10の試験すべてがロシュ社資金によるものだった。しかも、そのうちピアレビュー誌に発表されたのは二つにすぎなかった。10の試験すべてがロシュの被用者とお雇いアカデミック・コンサルタントの立案したものだった・・・***。 専門家も役人も、みんな製薬会社に騙されていたということか。

 レビューは、「適正なデータの欠如は、タミフルがインフルエンザ合併症を防ぐという以前の発見を傷つける。これらの不確実性を解決するための独立した無作為の試験が必要だ」と結論する。

 こういうタミフルの購入・備蓄に、日本を含む世界中の国が大枚をはたいている。抗生剤さえあれば十分ではないのか。「インフルエンザ様の病気を発症している以外は健康な人間に広くタミフルを使用することを支持する証拠はほとんどない。保健薬品に支出する財源を著しく欠いているこの国で、タミフルがこれほど広く使われているのは驚くべきことだ。しかし、・・・これはアメリカの銃規制と似ている。家に銃を置けば、それを使うのはずっと簡単なことになる。しかし、これは、そうすることが正しいということを意味するわけではない」(ロシュの提供した臨床試験データを分析、データをめぐる疑いはあるけれども肺炎のリスクを減らす可能性はある、しかし、ベネフィットは小さく、副作用も考慮されねばならないとする別の研究を発表したバーミン ガム大学のニック・フリーマントル教授)****。(廃止!−仕分け人)

 *Tom Jefferson et al.,Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults: systematic review and meta-analysis,BMJ,Published 8 December 2009, doi:10.1136/bmj.b5106
  http://www.bmj.com/cgi/content/full/339/dec07_2/b5106

 **Laurent Kaiser et al.Impact of Oseltamivir Treatment on Influenza-Related Lower Respiratory Tract Complications and Hospitalizations
    http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/abstract/163/14/1667?ijKey=0ae25799e079b4f30be6a72ae5911f3d742b3cfb&keytype2=tf_ipsecsha

 ***Editorial:Why don’t we have all the evidence on oseltamivir?
  http://www.bmj.com/cgi/content/full/339/dec08_3/b5351
  ****Doctors doubt effectiveness of Tamiflu,The Guardian,12.8
    http://www.guardian.co.uk/world/2009/dec/08/tamiflu-swine-flu-roche