農業情報研究所環境感染症ニュース:2011年3月1日

H1N1と鳥インフルエンザウィルスが危険なハイブリッドウィルスを生み出す 中国の研究

  H9N2インフルエンザウィルスは各種の鳥を通して世界中に広がり、豚や人なとの哺乳類も繰り返し感染している。このウィルスとパンデミックウィルス・H1N1/2009(豚インフルエンザ)の豚と人のなかでの共存は、この二つのウィルスが合併結合する(reassort)チャンスを提供する。こうして生まれるかもしれない合併結合ウィルスの公衆衛生リスクを評価するために、中国研究者がこれらウィルスの遺伝子を混ぜ合わせた127のハイブリッドウィルスを作り出し、マウスを使って病毒性を調べた。そのうち8つのウィルスは、両親よりも強毒性を持つことが分かった。

 パンデミックウィルスは最初恐れられたほどには強毒性を持たなかったが、これら8つのハイブリッドは感染したマウスに重症の肺炎、浮腫、出血を引き起こした。インフルエンザウィルスは8つのセグメント(遺伝子断片)を持つが、8つの危険なハイブリッドウィルスは、すべてがH1N1に属するPA(と呼ばれる)遺伝子を持っていた。研究者は、この合併結合ウィルスは人間にとって非常に危険なものになり得る、発生するかもしれないH9-パンデミック合併結合ウィルス、特にH1N1/2009起源のPA遺伝子を持つ合併結合ウィルスの監視が重要だと言う。

 この研究は、全米科学アカデミーのプロシーディング誌の最新版で発表された。

 Yipeng Sun et al,High genetic compatibility and increased pathogenicity of reassortants derived from avian H9N2 and pandemic H1N1/2009 influenza viruses,Published online before print February 28, 2011
  Abstract:http://www.pnas.org/content/early/2011/02/23/1019109108.abstract

 このような監視とともに、こうしたウィルスを出現させないために、単一のホストに二つのウィルスが感染する機会を減らさねばならない。鳥インフルエンザと言えば専らH5N1が恐れられ、H1N1は恐るに足りずといった風潮が見られないだろうか。問題は家畜や鳥の過密飼育に及ぶ。