激烈なナラ枯れに襲われた山形・飯豊山麓

農業情報研究所

08.9.2

 たった3年ほど前に新潟から進入した山形県小国町のナラ枯れが一気に激甚化している。8月30日−9月1日に見た状況は写真(筆者撮影)の通りだ。

 枯死は岩山の頂部から底部の川岸まで、全山に広がっている。ナラ枯れの元凶とされるカシノナガキクイムシが穿入しナラ類樹木のすべてが枯死するわけではないとされるが、これほどの広がりが生態系に影響を及ぼさないはずがない。それに支えられた過疎山村の生活も存亡の危機に立たされている。

(枯死したミズナラの幹芯部を埋め尽くすカシノナガキクイムシ(カシナガ)の幼虫) (カシナガにより排出され、根元に堆積したオガクズ)

 多くの昆虫や野生動物がナラに依存して生きている。熊は重要食料源(ナラの実、どんぐり)を失う。処々の山崩れの恐れも増す。貴重な伝統食品であるトチ餅が作れず、ナラの根元に自生する(天然? 誰がこんな形容詞をつけねばならなくしたのか)舞茸も消えてなくなる恐れがある。山村はその生活文化のみならず、その存続のために今ますます重要になりつつある観光資源も失う。

 有効なナラ枯れ防止策が今すぐ取られないと、日本は、日本を日本たらしめている自然と生活文化を永久に失うことになる。福田であろうが、麻生であろうが、小沢であろうが、長い目で見た日本の将来とは何の関係もない。マスコミは、そんなことに大量の紙面と時間を費やす前に、地方が直面するこの差し迫った現実をこそ伝えるべきだ。

 参考資料
 山形県:ナラ枯れ対策について(平成20年版)
 http://www.yamagata-kokuyurin.jp/narakare.pdf
  独立行政法人 森林総合研究所 関西支所:ナラ枯れの被害をどう減らすか― 里山林を守るために―
 http://www.fsm.affrc.go.jp/Nenpou/other/nara-fsm_200703.pdf
 金沢大学21世紀COEプログラム・(株)ササオ:どんぐりの木が枯れていく―ナラ枯れの仕組み―
 http://kamatan.uf.a.u-tokyo.ac.jp/research/research04/contents/content.html