フィリピン、前代未聞の洪水・土砂崩れ災害で、25年間の森林伐採全面禁止へ

農業情報研究所(WAPIC)

04.12.8

 フィリピン下院自然資源委員会がアロヨ大統領が求める25年間の森林伐採を禁じる法案を承認した。フィリピンは先月末以来、相次ぐ熱帯低気圧、台風の襲来で、ルソン島を中心に1500人を超える死者・行方不明者を出す大災害に見舞われている。このような大災害が起きたのは森林破壊のためだという見方が強まっており、大統領の要請もこのような声を受け入れたものだ。

 フィリピン木材生産者協会は、この禁止により伐採業者が事業をやめたときに出る失業者の問題はともかく、政府も木材加工工場の閉鎖で税収を失い、輸入木材の価格高騰も起きると反対している。しかし、フィリピン中のほとんどの町村に壊滅的打撃を与えたという災害の大きさが、こうした声をかき消した。

 ただし、この措置止が真に伐採の全面禁止に結び付くかどうかははっきりしない面もあるようだ。報道によると(25-year total log ban gets House committee nod,INQ7.net,12.8)、委員会採択法案は、違法伐採に対する刑罰に死刑を含めていない。また、「原生林及び二次林」の伐採を禁じるという条項があり、全面と言いながら、植林地も対象となるのかどうかは不透明だ。ただし、来年1月の本会議でのこの法案採択の可能性が高いという。

 この法案とは別に、大統領は主要な違法伐採業者を確認、告発するためのタスクフォースを発足させた。「違法伐採は持続可能な環境への権利の侵犯者」と言う。タスクフォースは、今日から1ヵ月をかけ、最もひどい罹災地域からこの作業にかかる。それにしても、人々は今後どうやって生き延びるのだろうか。インドネシアでも、伐採全面禁止の要求が出始めている。