古い森林は立派な炭素吸収源 その撹乱は大量の炭素放出につながるー新研究

農業情報研究所(WAPIC)

08.9.11

  最近植林された若い森林は二酸化炭素を吸収するが、成熟した古い森林は新たな成長は少なく、古い大木が死に、分解し、蓄積された二酸化炭素を放出するのでカーボンニュートラルだ、従って二酸化炭素隔離には成熟した森林を伐採し、植林をするのが効果的だ、という考え方が支配的である。

 実際、京都議定書で炭素吸収源として認められたのは、過去50年来森林がなかった土地への植林(新規植林)、1990年に森林でなかった土地への植林(再植林)で出来た森林と、森林の多様な機能を十分に発揮するための適切な森林経営が行われている森林に限られる。

 しかし、人の手が入らないこれ以外の古い森林は本当に炭素吸収源として役に立っていないのだろうか。そういう森林は伐採したり、焼き払ったりしてもいいのだろうか。そういう疑問は前からある。 こうした疑問を新たなデータで裏付ける新たな研究*が現れた。

 Nature誌の最新号に発表されたこの研究によると、15年から800年の間の年齢の森林における純エコシステム生産性(土壌を含む森林の純炭素収支)は、通常はプラスであった。古い森林はカーボンニュートラルだという長い間の支配的見解とは逆に、それは炭素を蓄積し続けることができる。

 一次林の半分(6 × 108f)は北半球の北方及び温帯地域にある。これらの森林だけでも、炭素を年に1.3 ±0.5ギガトン隔離すると分析された。これは、現在は大気中二酸化炭素濃度の増加をオフセットしないと考えられている地球森林面積の15%が、地球のエコシステムの純生産性の少なくとも10%を提供していることを示唆する。

 古い森林は何世紀にもわたり炭素を蓄積、大量の炭素を含んでいる。もしもこれらの森林が撹乱されれば、土壌炭素を含むこの炭素の大部分が大気中に戻ると予想されるという。

 そうであれば、従来の気候モデルは見直されねばならず、また古い森林の保護は植林以上の炭素隔離手段として認められねばならないだろう。容易な植林(森林管理)は、逆に炭素放出を増す恐れさえある。

 *Sebastiaan Luyssaert et al,Old-growth forests as global carbon sinks,Nature 455, 213-215 (11 September 2008)
    http://www.nature.com/nature/journal/v455/n7210/full/nature07276.html

  次も参照
  Old forests capture plenty of carbon,Nature News,9.10
  http://www.nature.com/news/2008/080910/full/news.2008.1092.html