オイルパームがアマゾン森林の新たな脅威に

農業情報研究所(WAPIC)

09.3.26

  オイルパーム(アブラヤシ)栽培は東南アジア熱帯雨林破壊の最大の元凶となっているが、ブラジル森林法の改変、新たなインフラ、地域における外国アグリビジネスの影響で、アマゾン熱帯雨林に対する脅威ともなってきた。このように警告するスミソニアン熱帯研究所(パナマ)の科学者による新たな研究*が発表された。

 * Rhett A. Butler and William F. Laurance,Is oil palm the next emerging threat to the Amazon?,Tropical Conservation Science,2-1(March 2009),pp.1-10
  http://tropicalconservationscience.mongabay.com/content/v2/09-03-23_butler-laurance_1-10.pdf

  現在の森林法では、アマゾンの土地を開拓する土地所有者は、土地の80%を森林として維持しなければならない。しかし、新たな法律は、この80%のうちの30%までをオイルパーム栽培地(プランテーション)とすることを許す。研究者によると、こうなったときには、ブラジルアマゾンで天然林を犠牲にしたオイルパームプランテーションの拡大が起きる可能性が高い。

 オイルパームは世界で最も収量が高い油糧植物で、ブラジルアマゾンの現在の支配的農業活動となっている牧牛や機械化された大規模大豆農業よりも収益性が高く、多くの雇用を提供する。バイオ燃料用需要まで加わった世界的な需要の増加でパームオイルオイル価格が上昇しているとき、伐採跡地を放置するのではなく、オイルパームプランテ ーションの造成に費用をかけてもお釣りが来る。オイルパーム拡大が加速、それがインフラの拡大を促し、地域にける新たな土地利用形態を生み出すことになりそうだ。 

 研究者は、単位面積あたりの油の収量が大豆よりも多く、雇用も大豆農場や牛放牧よりも多いとすれば、オイルパームを遊休農地や放牧地に制限すれば(それによってこれらの土地の所有者がさらに奥地森林に移動するようなことがあれば話は別だが)、大豆栽培や牛放牧が広がるよりは地域の経済や環境に有益だが、そんなシナリオは起きそうもないと言う。

 東南アジアの経験からすれば、これは生物多様性を大きく損なう。また、土地と地上のバイオマスに貯えられた大量の炭素の放出で気候変動にも影響する。研究者は、持続可能なパームオイルに関するラウンドテーブル(RSPO)が推奨する栽培方法の奨励など、重大な環境影響を和らげる方法を提案している。