ブラジル ルラ大統領 VS アマゾン森林 違法占拠者に土地所有権を与える新法に署名

農業情報研究所(WAPIC)

09.6.29

  ブラジルのルラ大統領が26日夜、連邦所有のアマゾン雨林の土地をおよそ100万に上る違法占拠者に 譲渡する法律に署名した。これら違法占拠者の多くは大規模プランテーションの拡大に追われた小農民だが、大土地所有者や大規模伐採業者も含まれ、譲渡の対象となる土地の面積は、日本の国土面積の1.8倍に相当する6740万ヘクタールにもなる。

 新法の下では、100ヘクタールまでの占拠者―50%はこの規模の小農民とされる―は無償で土地所有権を与えられる。100-400ヘクタールの占拠地は”象徴的”価格で売られ、400-1500ヘクタールの占拠地は 当局が定める市場価格、それ以上で2500ヘクタールまでの占拠地は競売による最高値で売られる。 この面積を超える土地の譲渡は議会の承認に服する。

 政府によると、これら地域の住民に所有権を与えることで暴力、ときには殺人まで伴う土地紛争が減り、雨林の監視も容易になる。新たな土地所有者は、税を払い、環境規制を守り、違法占拠や森林破壊の 環境規制官による取り締まりを助ける。

 大統領は、農業その他の産業の圧力で導入された不在地主や企業の所有も認めるという議会修正条項は拒否した。しかし、400ヘクタール未満の占拠地については、譲渡を求める人が現にその土地を占有し・使っているかどうか検証することなく所有権を与えるという条項は残した。また、取得された土地を販売 (転売)できるようになる経過期間を取得後10年としていた当初案を3年に短縮するという議会修正も認めた。

 環境団体は、これが違法占拠者に”特赦”を与えるだけでなく、大地主や大規模な鉱業・伐採企業に転売するための土地争奪と投機を煽り、大規模な土地を購入した大地主や企業はさらなる森林破壊に走るだろうと恐れる。 

 このような法律はルラ大統領が拒否するだろうという環境団体や専門家の期待は裏切られた。ルラ大統領は、世紀の開発功労者ではなく、アマゾン森林の世紀の破壊者として名を残すことになるのだろうか。

 Lula signs land law aimed at reforming Amazon,Reuters,6.26
 http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUSN26349366

 
Brazil approves controversial land tenure law,AP,6.26
 http://hosted.ap.org/dynamic/stories/L/LT_BRAZIL_AMAZON_LAND?SITE=TXMCA&SECTION=HOME&TEMPLATE=DEFAULT

 Brazil grants land rights to squatters living in Amazon rainforest,Guardian,6.26
 http://www.guardian.co.uk/environment/2009/jun/26/amazon-land-rights-brazil

 Brazil's Amazon ownership plans resisted,UPI,6.23
 http://www.upi.com/Energy_Resources/2009/06/23/Brazils-Amazon-ownership-plans-resisted/UPI-85231245777400/

 BRAZIL: Environment Minister Under Fire from All Sides,IPS,6.12
 http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=47199