ナイキ ブラジル・レザーのトレーサビリティを強化 牛飼育によるアマゾン森林破壊防止のため

農業情報研究所(WAPIC)

09.7.24

  世界的なスポーツ用品メーカー・ナイキが7月22日、牛飼育(放牧)のためのアマゾン森林破壊の抑制を目的とする新たなレザー(牛皮)調達ガイドラインを発表した。 「ブラジル・アマゾンの牛飼育部門は世界の森林破壊の最大の牽引者であり、年々の世界の森林破壊の14%に責任がある」、「森林破壊による温室効果ガス排出を抑えるためにはこの部門に挑戦しなければならない」としたグリーンピース・インターナショナルの今年6月1日の要請に応えるものだ。

  NIKE,Inc. Press Release;NIKE, Inc. Commits to Helping Halt Amazon Deforestation,22 July, 2009
  http://www.nikebiz.com/media/pr/2009/07/22_AmazonLeatherPolicy.html
  Greenpease International Report;Slaughtering the Amazon,01 June 2009
  http://www.greenpeace.org/international/press/reports/slaughtering-the-amazon

  ナイキのプレス・リリースによると、「肉生産のための牛飼育と肉生産の副産物としてのレザーがアマゾン森林破壊に責任があるとグリーンピースが確認したとき、ナイキは迅速に応えた」。

 ナイキは、ナイキ製品に使われるレザーはアマゾン盆地内で調達されていないと、高度の確実性をもって言うことができる。しかし、現在、100%の信頼度をもってレザーの原産地を追跡するレーサビリティ・システムはないと認める。従って、トレーサビリティ・システムを今後確立するように納入業者に要請する政策を発表した。加えて、森林破壊のモラトリアムを要請するグリーンピースの ‘Commit or Cancel’原則にも調印したという。

 発表された政策によれば、ナイキは、IBGE(ブラジル国立地理統計研究所)が定義する”Amazon Biome”(アマゾン雨林とそれに関連した生態系)の内部で育てられた牛から生産されるレザーを使用しない。ブラジルのレザー納入業者に対し、Amazon Biomeの外で育てられた牛からの製品を納入することを要求する。

 ナイキ製品のためのブラジル・レザーの納入者は、納入レザーがAmazon Biomeの外で育てられた牛からのものであるという信頼できる保証書を提供するための追跡可能で・透明なシステムを、2010年7月1日までに作り上げねばならない。ナイキは、このシステム作りの進捗状況を、4半期ごとに審査する。

 2010年7月1日以後も信頼できる保証書が提供できなければ、法的アマゾン(Amazon Biomeを一部地域に含むブラジルの9州)全体の中で育てられた牛からのレザーもナイキ製品に使用しないこととする。

 こうすれば、信頼できるトレーサビリティ・システムが確立されなくても、アマゾン森林破壊に直接つながるレザーの調達は、ほぼ確実に排除できるということだ。

 ナイキは、このようなトレーサビリティの問題を超え、ブラジルの肉とレザーの供給にかかわるすべての産業のための実行可能な認証システムの確立も要請すると言う。このために、産業のレザー・ワーキング・グループ、グリーンピース、その他の関係者と共同する。

 さらに、ナイキとグリーンピースは気候変動の原因への取り組みでも利害を共にすると強調する。革新的気候・エネルギー政策のためのビジネス(BICEP)連合の創設を通じて米国の立法行動を要請、エアークッションに使用する温室効果ガス・SF6 を排除し、2007年には年間CO2排出量を1988年レベルから18%減らすことで、この約束を実証してきたと言う。