インドネシア政府 熱帯林・泥炭地破壊オイルパーム・プランテーションも国際支援対象の「森林」

農業情報研究所(WAPIC)

10.2.16

 インドネシア林業省が、熱帯雨林や泥炭湿地を壊して作られるために大量の温室効果ガスの放出の原因となると国際的批判を浴びているオイルパーム・プランテーションも、気候変動を緩和する国際基準に合致する森林に含める行政命令を準備している。

 省の研究開発部部長は、マレーシアなど多くの国はオイルパーム・プランテーションを森林に分類、森林国が樹木伐採停止で財政援助を受けることを可能にする国連「森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減(REDD)」スキームの対象に含めようとしている、国連も樹種にかかわりなく一定の高さの樹木を森林樹木に分類している、とこれを正当化している。

 Palm estate is forest, says ministry,The Jakarta Post,2.16
 http://www.thejakartapost.com/news/2010/02/16/palm-estate-forest-says-ministry.html

  インドネシアだけではない。「地球の友・ヨーロッパ」が入手した欧州委員会の持続可能なバイオ燃料基準案は、オイルパーム・プランテーションを「連たん森林地域」として認めている。

 2008年末に採択されたEUの再生可能エネルギー利用促進指令(EU再生可能エネルギー利用促進指令のバイオ燃料持続可能性基準(仮訳))は、2008年1月時点において「一続きの森林地域、すなわち樹高5m以上の樹木を持ち、30%以上が樹冠で覆われているか、樹木が自然にこの閾値に達し得る1 f以上にわたって広がる土地」であったが、いまやこのような「高度の炭素ストック」を持たなくなった土地で生産された原料から作られるバイオ燃料は持続可能なバイオ燃料の基準を満たさず、2020年までに輸送用燃料の10%を占めねばならないとされるバイオ燃料にはカウントしない、従って財政支援の対象ともしないと定めた。従って、2008年1月以降に「一続きの森林」を破壊して作られたオイルパーム・プランテーションから生産されるパームオイルを原料とするバイオディーゼルは、当然、持続可能なバイオ燃料とならないと考えられた。

 ところが、この案によれば、こうして作られたオイルパーム・プランテーションも「一続きの森林」なのだから、依然として高度の炭素ストックを持つ土地と認定され、ここで生産される原料から作られるパームオイル・バイオディーゼルも持続可能なバイオ燃料として公認されることになる。

  European Commission plans to sacrifice forests for biofuels,FoE Europe,10.2.3
  http://www.foeeurope.org/press/2010/Feb03_EC_plans_to_sacrifice_forests_for_biofuels.html

 巨大なEUバイオ燃料市場に輸出すべく、世界中の熱帯雨林のオイルパーム・プランテーション化が加速されることになるだろう。

 自分は、人類はまったく予期されない偶然の災厄で絶滅することはあり得ても、予想される破滅を回避する能力は持つと信じてきた。しかし、いまや、そういう能力も完全に失いつつあるようだ。