樹木は土壌微生物が作り出すメタンを大気中に吐き出す巨大な煙突 米国の新研究

農業情報研究所(WAPIC)

10.2.18

 樹木は土壌微生物が作り出すメタンガスを大気中に運び出す、まるで煙突のような働きをしているらしい。生きた樹木が二酸化炭素の25倍もの温暖化効果をもつメタンの大気中への放出で想像以上に大きな役割を果たしている。最新のネイチャー・ニュースによると、ポートランド州立大学の大気科学者のアンドリュー・ライス率いる研究がそう示唆しているという。

 Trees spit out gas from soil microbes,Nature News,2.16
 http://www.nature.com/news/2010/100216/full/463861a.html

 大気中のメタンの濃度は過去200年の間に倍以上に増えた。メタンが沼・湿地・水田などの水浸しの土壌や牛・羊など反芻動物、シロアリの消化管内での嫌気性プロセスから生じることはずっと前から分かっている。しかし、2006年、一研究チームは、植物もメタンを生産し、その量は世界全体の排出量の10−30%になるという驚くべきアイデアを提案した。これが本当なら、地球の炭素収支のオーバーホールが必要になる。

 そしていま、新たな研究は、樹木は土壌微生物が作り出すメタンガスを根・幹・葉を通して大気中に運びだす巨大な煙突のように働いていることを示唆している。こうして大気中に放出されるメタンの量は、地球全体の排出量の10%を占める可能性がある。これは、湿潤熱帯地域におけるメタンのフローが想像以上に多い理由も説明するという。

 研究チームは、メタンの大量産生が始まる好条件を作り出すために水浸しにした三つの樹種でのメタンのフローを測定した。ライス氏は、植物自身が好気的プロセスを通じてメタンを作りだす可能性も排除はしない、たとえば、2006年の研究が示唆するように、一定の強度と波長の光がメタンを生産する光分解反応を作りだす可能性がある、しかし、問題はそのマグニチュードだと言う。

 この研究は、樹木を通して運ばれた微生物メタンの同位体組成が2006年の研究で観察されたメタンのそれとほとんど同じであることも発見した。ということは、嫌気的に生産されたメタンと好気的に生産されたメタンを実地に区別するのは難しいということだ。 

 彼は、植物が自分でメタンを作っていると確信しているが、「大気中へのメタン排出において、生きた植生が以前考えられていた以上に大きな役割を演じていることがはっきりしてきた」と言う。


 温暖化防止のために木をじゃんじゃん切り倒せというはなしではない。まさかそういう人はいないとは思うが、早とちりしないように。念のため。