農業情報研究所環境原子力>資料紹介>2011年4月27日

チェルノブイリの遺産 避難地域の生活が元に戻ることはありそうにない―ガーディアン紙編集主任

 以下は、ガーディアン紙の環境問題編集主任・John Vidalの「チェルノブイリの遺産:通常に戻ることも、勘定を払い終わることもはありそうにない」と題する4月26日付リポートの紹介である。未だに収束への道が見えない東電原発事故、こんな事故はあり得ないと言い続けてきた政府(政治家、役人)、東電(原発企業)、専門家は、こうならないように全責任を負うべきである。

 Chernobyl's legacy: no likely return to normality and a never-ending bill,The Guardian,4.26

 
1986年 爆発から2週間余り後の5月12日にプラウダ紙に掲載された
チェルノブイリ4号機の写真。建設中の石棺をバックに労働者が放射
線量を測定している。写真は今65歳の当時AP記者、
Repik.が掲載の
3日前にヘリから撮影したもの。彼は、「今なら命令されても絶対に行
かない、無駄死にするようなもの」と言っている。(Kyiv Post,11.4.24)
http://www.kyivpost.com/news/nation/detail/102804/

東電福島では、こんな作業もいつ始まるか分からない。


 世界最悪の原発事故から25年、癌の数は増え続け、何万平方マイルの土地への立ち入りがなお制限され、最も影響が大きかったウクライナとベラルーシは、数千年も耐えつづけることになる負担を負わされている。

 1986年の爆発の遺産はまだ完全には明らかになっていないが、米国政府の医学研究機関であるナショナル保健研究所のための国際科学者による新たな研究によると、チェルノブイリから降り注いだヨウ素131への曝露が原因で、当時子供や大人だった人々の間に、なお甲状腺癌が起きている。研究者は 、1986年に地域に住んでいた人々に増えた癌のリスクが時間とともに減っていることを示唆する証拠はないと言う。

 8つの国連機関とロシア・ベラルーシ・ウクライナの政府が開いたチェルノブイリ・フォーラム(Chernobyl Forum)によると、約9000の癌死が予想されるが、この数字には、はるかに多いと推定した他の科学者が激しく異論を唱えている。

 社会的・環境的・経済的遺産についてはそれほどの論争はない。ウクライナ、ベラルーシ、ロシアの20万㎢に住む500万の人々が”被汚染者”に分類され、33万人以上が退避させられた。

 フォーラムによると、被災地域の貧困は今深刻で、旧ソ連の他の地域よりもはるか厳しい。人々の強制退去は永遠に忘れられない深い傷を残し、何世代もの人々を怯えさせている。最も最近の研究は、「避難者が補償を受け、無料で家を提供されるときでさえ、多くの人は深い不公正感を抱いている。多くはまだ職も、社会における居場所もなく、自分の生活を管理することもできないでいる。一部の高齢避難者は決して適応できないだろう」と言う。

 事故は、降下物の影響を受けたこれら地域を、経済的に不具にする。ウクライナとベラルーシは、それぞれ、今までに120億ドルをチェルノブイリ対策に支出した。フォーラムは、両国に「持続不能」で打ち続く負担を創りだしたと言う。

 農業には、なお重い負担がかかり続けている。78万5000ヘ、クタール以上の土地が多年にわたって利用を止められ、さらに70万ヘクタール以上で木材生産が止められた。汚染の低下とともに農業が再開されたが、国連によると、一層多くの肥料や添加物が必要だから、食料生産の費用は高くなる。加えて、チェルノブイリの風評が、農民の食料販売を困難にしている。

 高濃度のセシウム137がなお見られる多くの地域では、キノコ、ベリー、猟獣の採集や狩猟の禁止 ・制限が広く残っている。はるか遠く離れたイギリス、スウェーデン、ノルウェーも、ミルクやその他の製品の販売に対する制限が完全には解かれていない。スカンジナビアのトナカイは、なお高レベルに汚染されており、ウェールズの300以上の丘陵農場は、販売前にミルクと家畜の検査を受けねばならない。

 ドイツでは2009年、政府がハンターに対し、余りに汚染がひどいために売ることができないイノシシの肉の補償として55万5000ドルを払った。一部地域では、この肉の放射線量は、安全とされるキロ600ベクレルよりも10倍も多い7000ベクレルに達している。

 原発の周辺30キロの避難地域で通常の生活が完全に戻ることは永遠になさそうだ。移入者をとともに、数百人の人が、なおそこに住んでいるが、放射能tレベルは、まだ極度に高い。皮肉なことに、地域は野生動物の天国になっている。


 誰かお分かりの人がいたら聞きたい。福島はどうしたらこういう事態を避けることができるの でしょうか。