英国核燃料再処理施設、大量の放射性廃棄物漏出の発見に8ヵ月 原因は人為ミス

農業情報研究所(WAPIC)

05.5.30

 今月初め、英国各紙がセラフィールドの核燃料再処理施設・Thorpの破断したパイプから大量の高放射性液体廃棄物が漏出する事故を報じたが、29日付のインディペンデント紙が、この事故は9ヵ月もの間、知らされずにいたと暴露した(Revealed: huge Sellafield leak went undetected for 9 months;http://news.independent.co.uk/uk/environment/story.jsp?story=642358)。先月発見された漏出は人為的エラーの結果で、この事故により”オリンピック・プール”の半分ほどの液体プールが生まれた。この8万3000リットルにのぼるプールは4月19日になって発見された。過去13年で最悪の事故で、閣僚や官僚に回覧された内部調査のコピーによると、事故の重大性はこの再処理施設の将来に疑問を投げかけるという。

 施設を運営するブリティッシュ核グループ(BNG)は28日夜、労働者がパイプが8ヵ月も前に裂けたという”インジケーター”の警報への対応を怠ったことを認めた。会社は金属疲労が原因の他のあり得る漏出についてのチェックの見直しとスタッフの気分引き締めを命じたということだ。

 しかし、閣僚は、4月1日に特殊法人・原子力解体機関(NDA)が所有することになったThorpは、国際原子力エネルギー機関が”深刻”と分類する事故の結果、決して再開されることはないだろうと私的に認めた。他方、NDAが28日に発表した声明では、報告の発見の精査には時間がかかり、その会社と政府にとっての意味を議論するのはそれからだとされている。また、安全がNDAの最優先事項とも言う。

 ブレア首相とアラン・ジョンソン貿易担当国務大臣は最近、気候変動を抑制する二酸化炭素排出削減の目標の達成のために、原発を増やす姿勢を鮮明にしている(Blair demands nuclear power to protect high 'living standards',The Independent,5.9)。インディペンデント紙は、それが問題の調査をスタートさせるのをためらってきた理由と批判する。

 BNGは当初と同様、液体は外部に漏れておらず、事故は公衆への脅威にならないと強調している。しかし、刑事告発に直面する可能性がある。核施設検査官(NII)は、どんな監視装置が設置されているのか、それが機能しているのかどうか、もしそうならば作動しなかった理由を見つけ出すように求めていると確認した。

 事故の漏洩以来、4人の検査官がカンブリアのサイトに駐在、人的エラーに加え、技術者が液体廃棄物を貯蔵する可動タンクにつながるパイプの修繕に何故失敗したのかを調査している。金属疲労が基本的原因であった。調査は何週間か続けられ、その後にBNGに対するさらなる行動が決定されるだろうという。貿易産業省報道官は、ジョンソン氏は、NIIの調査の完了を待って施設の将来について決定することになると語った。「BNGが運転慣行改善のための勧告の実施と漏れ出した液体の回収に緊急に動くことが肝要、将来に関する決定を行う前に勧告を待つつもり」と言う。

 しかし、決定の遅れや断固たる対応の躊躇は首相、政府の原発推進への逆風を強めるばかりだろう。なお根強い国民の原発への不安を高めるだけではない。近隣諸国の不安も高まっている。

 セラフィールドから出る放射能が風で西海岸に運ばれ、魚場を汚染することを長年恐れてきたノルウェーの環境相は、この事故の漏洩を受け、ノルウェー放射線防護機関(NRPA)に即座の報告を求めた。また、英国環境保護相・エリオット・モーレイに、この問題の政治レベルでの共同フォローアップの確保を要請した(Sellafield leak rings alarms in Norway,Aftenposten,5.9)。

 アイルランド当局も、アイルランドにとっての事故の影響はチェルノブイリ事故ほどではないにしても、長期的健康影響を持つ、農業や観光業には深刻な影響を持つだろうと、この問題が最大の関心事であることを表明している(Destruction of Sellafield storage tanks 'biggest worry',The Irish Independent,5.12)。また、今回の発見と発表の遅れの露見を受け、アイルランド環境相は、英国環境相と貿易産業相に早期会談を求める書簡を送り、またEUエネルギー担当委員にもThorp問題を取り上げるように要請したことを明らかにした。Thorpへの委員の注目と外部独立監査の重要性への留意を促がしたという(Sellafield leak prompts Homer Simpson jibe from minister,The rish Independent,5.28)。