チェルノブイリ事故後20年 なお苦しめられる英国羊農民

農業情報研究所(WAPIC)

06,4.15

 チェルノブイリで起きた20年前の世界最悪の原発事故が英国の羊農民をなお苦しめている。これら農民は今後何年も厳格な安全措置に従わねばならないだろうという。13日付のガーディアン紙が報じた。

 Sheep farms under curbs see no end to Chernobyl fallout,Guardian,4.13
 http://www.guardian.co.uk/country/article/0,,1752683,00.html

 それによると、食品基準庁(FSA)の過去2年間にわたる羊のチェックは、セシウムのレベルがチェルノブイリで放出された汚染物質を運ぶ雨を受けた高地でなお高い。高地の傾斜地を離れてから24時間以内に行われる羊の検査は、多くの農民がなお深刻な問題を抱えていることを示す。羊は、低地の牧場に移動すると急速にセシウムを排出するが、この元素の半減期は30年に及ぶ。

 ウェールズの状況は最悪で、放射能レベルが下がった農場でさえも、農民は隣と分ける家畜が通れないフェンスがないためにコントロールを免れない。羊は特別のモニターで検査を受けなければ、と殺のために市場に送ることはできず、他の羊の農場出入りも厳格なルールで律せられる。

 放射能はスコットランド南部、レーク・ディストリクト(湖水地方)の一部とスノードニア(ウェールズ北部)の丘の頂上の痩せた土壌にも残っている。草やその他の植物はセシウムを容易に吸収し、これを食べる羊も吸収することになる。消費者の怯えを恐れ、自分の経験を話す農民はほとんどいないという。

 FSAは、コントロールは公衆の食品安全を有効に守っていると言う。それは安全検査不合格の羊の数に関する記録を持っていないが、農民は、セシウムが消えるまでの時間を稼ぐために、検査前に高地傾斜地から草が汚染されていない低地牧場に羊を移すことを直ぐに学んだ。

 オペレーターはバックグラウンド放射線(自然発生放射線)をチェックしたのち、羊をシリンダーで固定して筋肉の放射能を測定する。計器を3回読み、その平均値で合否が決まる。ヨーロッパの専門家が設定した安全限界は羊1kg当たりで1000ベクレルだが、泥や毛が邪魔をするから、645ベクレル以下でないと食用に適さないとされる。

 農民はそのたびに1頭当たり1.30£を支払われ、羊に付けられたマークのために市場で売れる値が下がった分を補償される。このような支払のコストは、今までに恐らく1500万£にのぼった。初めはきのこや蜂蜜にも低レベルのセシウムが発見されたが、低地の草を食べる牛やその他の家畜には心配はない。

 影響を受ける農場の数は減りつつある。チェルノブイリ事故は1986年4月26日に起きた。5月1日から4日の間にスコットランド南部、ウェールズ北部、北アイルランドに放射性物質を含む雨が降った。6月に羊の移動制限が課され、当初は8914の農場、400万の羊が影響を受けた。現在では、コントロールを受ける農場数は、ウェールズで359、湖水地方で9、スコットランドで10になり、これら農場の羊は20万600頭にまで減った。しかし、規制がいつ終わるのか、誰も知らないという。

 チェルノブイリ事故は、こんなところにまで何時消えるとも分からない傷跡を残している。

 なお、14日付のル・モンド紙は、チェルノブイリ事故とその現在まで及ぶ影響を、1986年から2006までにわたり写真入りで追跡している。

 1986-2006 : la catastrophe de Tchernobyl,Le Monde,06.4.14
 http://www.lemonde.fr/web/panorama/0,11-0@2-3214,32-761162@51-759222@1-3699,0.html