農業情報研究所東電福島第一原発事故関係2011年7月29日

焼却も、土へのすき込みも許されない稲わら 原発事故で生じた新種の放射性廃棄物が列島を埋め尽くす

 放射性廃棄物と言えば、これまでは原発など核関連施設や実験施設・医療施設なから出る低レベル放射能性廃棄物と、使用済み核燃料に代表される高レベル放射性廃棄物に限られていた。いずれも、とりあえずは閉じ込められた空間の中にあり、人間の生活圏への直接的脅威とはならなかった。前者の最終処分については、一定期間地中に閉じこめておく方法が講じられてきた。後者の最終最終処分については、人間界から隔絶するために地下深くに埋める地層処分が考えられている。

 ところが、東電福島原発事故で広大な地域のいたるところに飛散、降下した放射性物質のために、震災で生じた大量のがれき、浄水残土や下水汚泥やその焼却灰、除染のためにはがされた表土、規制値以上の放射性物質を含む農畜水産物・食品、除染の目的で植えられたヒマワリやナタネ・・・など、恐らくはすべては知り得ないほどのモノが新たな放射性廃棄物に付け加わった。このような低レベルとも、高レベル とも分類できない大量の放射性廃棄物について、既成の処分方法があるはずがない。それにもかかわらず、放置するか、処分方法を誤れば、広範な環境を汚し、人間の生活圏が脅かされる。

 とりわけ牛肉のセシウム汚染で明らかになった稲わらの汚染、それを給餌することで排出される牛の糞尿の汚染は、食品安全の問題を超えた、ほとんど解決不能にも見える環境問題を提起するだろう。毎年大量に発生する稲わらは、焼却されるか、そのまま、あるいは家畜の糞尿とともに堆肥化されて農地にすきこまれるか 、牛の餌とされるかしてきた。しかし、餌としての利用はもちろん、セシウムの大気、土中への放出を考えれば、焼却も、すき込みも許されない。出続ける家畜の糞尿も 土に返すわけにはいかず、行き場を失う。こんな事態が長引けば、農村空間全体が、これらの放射性廃棄物で埋めつくされ、警戒区域、避難区域と同様な人の住めない場所になってしまう。

 しかし、政府も、識者も、多くの一般国民も、ことの重大さに気付いているようには見えない。今は、なにをおいても、すべての人々の知恵を結集、この膨大な放射性廃棄物の処分方法を確立すべきときではないか。日本列島が放射性廃棄物で埋め尽くされるというのは、もはや原発依存社会の遠い将来の話ではない。現在の現実になりつつある。これは、何んとしても防がねばならないだろう。