農業情報研究所東電福島第一原発事故関係2011年8月24日

農村工学研が水田放射性セシウム除染試験 大部分の水稲既作付水田でも有効か?

 農研機構農村工学研究所が8月19日、福島県飯舘村の水田で、固化剤を用いた表土のはぎ取りと、代かき・強制落水による放射性セシウム除去技術の現地試験を開始した。

 福島県飯舘村現地水田ほ場における農地土壌等における放射性物質除去技術開発のための一連の試験のお知らせ 農村工学研究所 11.8.15
 セシウム汚染 表土に固化剤 水田浄化へ試験開始 福島で農村工学研 日本農業新聞 11.8.20

 セシウムは土壌粒子に固着されやすく、とわけけ粘土の多い水田では降下した放射性セシウムの多くが表層から数センチのところにとどまっているとみられる。実際、東京大学と福島県農業総合センターの研究は 5月下旬の郡山市の水田土壌調査で、放射性セシウムの一部は深さ約15センチまで浸透しているけれども、88%は深さ3センチまで、96%は同5センチまでにとどまっていることを確認している(セシウム、深さ15センチまで浸透 郡山の水田 朝日新聞 11.8.13)。

 農村工学研の飯舘村試験水田でも、深さ2.5センチまでの表土の放射性セシウム濃度は1キログラム当たり6万5900ベクレルだが、2・5〜5センチの土壌では同1330ベクレルと大きく下がり、農水省が水田作付の可否を決めるために測定する深さ15センチまでの土壌の平均セシウム濃度は同約1万2000ベクレルになる。そこで、試験水田では同研究所考案の固化剤を散布して固めた表土を機械で除去、水稲作付が可能な同5000ベクレル以下に引き下げる のが目標になるという。土壌の深さに応じた放射性セシウム分布がこのようであるかぎり、せいぜい深さ3センチまでの表土の除去で、この目標の達成は確かに可能と思われる。

 もう一つの試験は、水深10センチに湛水して土壌表層を5センチほど代かき、濁水を試験田内に設けた沈殿槽にポンプで送り込む。濁水を個体と液体に分離、上澄み液は顔料色素のプルシアンブルーなどでセシウムを除いて排水し、固形土壌は乾燥させて持ち出す。表土を剥ぎ取るより土壌の持ち出し量が減ると見込まれるという。

 ところで、このような水田除染方法は、いずれも放射性セシウムが表層土壌にとどまっていることを前提としている。まだ耕していない 警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域の水田では有効かもしれない。しかし、4500ベクレルを超える限界ギリギリの濃度を示した一部地域を含む他の福島県内の水田はすでに水を入れられ、耕されてしまった。大部分は表層にとどまっていた放射性セシウムが深いところに送り込まれてしまった可能性が高い。先の東京大学と福島県農業総合センターの研究では、セシウムが溶けた水が深いところに移動する速度は水の千分の1程度と考えられていたが、実際には10分の1程度と、予想より速いこともわかったという。

 飯舘村試験水田の試験結果は、福島県の大部分の水田では適用できないかもしれない。もはや、除染は何十年かけても除去しきれない非効率的なヒマワリやナタネの植栽に頼るほかなくなっているのかもしれない。折角の現地試験も無駄になる恐れがある。せめて1年、なぜ水稲作付を延ばせなかったのか。政府の無責任な原発事故対応が取り返しのつかな結果を招かないように祈るのみである。