農業情報研究所東電福島第一原発事故関係2011年9月2日(最終改訂:9月3日)

進むコメのセシウム検査 規制値超えの可能性はゼロに近いが 消費者は?稲わらは?

  各地の早期出荷米の放射性セシウム(以下、単にセシウムと呼ぶ)検査結果が続々と発表されている。今までのところ、茨城県鉾田市、千葉県白井市・市川市、福島県二本松市・本宮市の玄米から、それぞれキログラム当たり52ベクレル、47ベクレル(予備検査で。本検査では検出されず)、46ベクレル、22ベクレル、12ベクレルの暫定規制値を大幅に下回るセシウムが検出されただけである。検査対象の大部分では検出されないか、検出限界を下回っている。不安でたまらなかった農家が胸をなでおろす姿が目に浮かぶ。しかし、この結果は私には当然のように思われる。

 検査されたコメが生産された水田土壌のセシウム濃度が公表されていないから確かなことは言えないが、これまで検査されたコメの生産地域の水田土壌セシウム濃度は、恐らくは土壌1キログラム当たり1000ベクレル以下がほとんど、くても2000ベクレル以下であったと思われる。これは、先月末に農水省が発表した東北・関東6県の農地土壌放射性セシウム濃度マップの基礎資料(農地土壌中の放射性セシウムの分析値)や、同じく文科省が発表した福島第一原発から80キロ、100キロ、120キロの範囲の地表面に沈着した放射性セシウムの濃度を示すマップ(http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1940/2011/08/1940_0830_1.pdf)から推測できる。

 ちなみに農水省調査のデータから農地土壌中のセシウム濃度別の調査地点数を示すと下のとおりである。

水田土壌中の放射性セシウム濃度(ベクレル/kg)別地点数

 

999

10001999

20002999

30003999

40004999

5000

宮城県

14

0

0

0

0

0

福島県県北地方

3

14

13

7

3

0

同県中地方

11

10

5

3

0

0

同県南地方

8

1

0

0

0

0

同会津地方

26

1

0

0

0

0

同相双地方

17

12

2

5

3

24

同いわき

5

1

1

2

0

0

栃木県

20

4

0

1

0

0

群馬県

1

0

0

0

0

0

茨城県

15

0

0

0

0

0

千葉県

4

0

0

0

0

0

畑地(転換畑、樹園地含む)土壌中の放射性セシウム濃度(ベクレル/kg)別地点数

 

999

10001999

20002999

30003999

40004999

5000

宮城県

50

2

0

0

0

0

福島県県北地方

2

9

16

7

6

7

同県中地方

33

8

2

1

0

0

同県南地方

14

3

2

0

0

0

同会津地方

29

1

0

0

0

0

同相双地方

7

7

3

2

5

7

同いわき

7

0

0

0

0

1

栃木県

19

3

0

0

0

0

群馬県

12

0

0

0

0

0

茨城県

47

0

0

0

0

0

千葉県

26

0

0

0

0

0

  福島県県北地方(福島市、二本松市、伊達市、本宮市等)、県中地方(郡山市、須賀川市等)と原発に近い相双地方(相馬市、南相馬市、楢葉町、川内村、浪江町、葛尾村、新地町、飯舘村、いわき市の一部)を除けば、水田土壌のセシウム濃度が1000ベクレルを超えるところは極めて少ない。これ以外の地域で1000ベクレルを超える地点は、福島県南部、会津地方、宮城県南部、栃木県那須地方に僅かに見られるだけである。

 こうして、今までに検査されたコメのほとんどが1000ベクレル未満、一部が1000ベクレルを多少上回るセシウム濃度の水田で生産されたものと推測できる。

 土壌から玄米へのセシウムの移行係数(土壌中のセシウムが玄米に移行する割合)を農水省が仮定するように0.1とすると、1000ベクレルの水田で生産される玄米からでも100ベクレル(白米ではそれよりずっと少ない)のセシウムが検出されるはずである。暫定規制値を下回るとはいえ、消費者は毎日安心して食べるわけにはいかない。しかし、これまで玄米から検出されたセシウムは最高でも50ベクレルを下回っている。多分、0.1という移行係数が過大なのだ。

 植物は、土壌粒子に固着したセシウムが水に溶けださないかぎり、これを根から吸収できない。東京大学と福島県農業総合センターの研究者が行った福島県の水田・畑地土壌からの放射性物質の水への溶出試験によると、溶出率は20%、抽出を繰り返しても2回目以降の溶出はほとんどなかったという(福島県の水田および畑作土壌からの137Cs、134Csならびに131Iの溶出実験 [1464KB] ラジオアイソトープ、Vol.60 No.8 (2011))。これを一般化できるとすれば、1000ベクレルの水田土壌から稲が吸収できるのは、最大でも200ベクレルである。ところで、稲の中のセシウムの73%は稲わら に、白米、、ぬか、もみ殻、根にはそれぞれに7%、10%、7%、3%が分布 するといいうから(稲のセシウム 白米への移行わずか 分散割合を発表 畜産草地研究所 日本農業新聞 11.8.4)、1000ベクレルの土壌から玄米に移行するのは 最大限で200ベクレルの20%、40ベクレル(白米では14ベクレル=多分、検出限界ぎりぎり)程度ということになる。これで、現実の検査結果が十分に説明できるのではなかろうか。

 こうした推定が信頼できるとすると、今後福島県北や栃木那須地方の2000ベクレルを超えるような地域のコメの検査が進むと、土壌のセシウム濃度に応じた次のような汚染度のコメが現れる可能性がある。

 

土壌のセシウム濃度

20002999

30003999

40004999

12500

玄米のセシウム濃度

80120

120160

160200

500

白米のセシウム濃度

2842

4256

5670

175

稲わらのセシウム濃度

292438

438584

584740

1825

 現在稲作付けが制限されている原発周辺地域を除けば、暫定規制値を超えるコメが生産される可能性はゼロに近い。しかし、この暫定規制値は余りに高すぎるという批判がある。暫定規制値を下回るとはいえ、こうした土壌汚染地域のコメを消費者が受け入れるかどうかが問題だ。参考までに、稲わらに含まれる可能性のあるセシウムの濃度も示した。2000ベクレルを超える汚染土壌から生産される稲わらは、飼料として利用が可能な基準値(300べクレル)、肥料・土壌改良資材等としての利用が可能な基準値(400ベクレル)を超える可能性が大きい。これら地域の農家は、コメは 出荷できても、大量の放射性廃棄物(稲わら、もみ殻)を抱え込むことになりかねない。稲わらの検査体制と処分方法の確立が急務だ。