農業情報研究所環境原子力東電福島第一原発事故関係2011年9月24日

コメの放射性物質検査 福島県で暫定規制値なみのセシウム初検出 セシウムが溶出しやすい土壌?

 福島県が9月23日、収穫前に行う一般米の放射性物質予備検査で、二本松市の旧小浜町地区で採取した玄米から1キログラムあたり500ベクレルの放射性セシウム(セシウム134が220ベクレル、セシウム137が280ベクレル)が検出されたと発表した。 

 この検体は9月12日に採取した「ひとめぼれ」の玄米で、これを採取した水田の土壌1キログラムあたりの放射性セシウムは3000ベクレルであった。県は土が混入した可能性もあると再検査したが、ほぼ同じの490ベクレルが検出された。周辺の水田11ヵ所の玄米を調べたところ、検出限界未満から212ベクレルとバラツキがあったという。

 二本松産米:予備検査で規制値検出 本検査で出荷判断へ 毎日JP 11.9.24
 二本松にセシウム 500ベクレル コメ予備検査で検出 東京新聞 11.9.24 朝刊 2面

 農水省は、予備調査の結果、放射性セシウム濃度が1キログラムあたり200ベクレルを超えた場合、その市町村を本調査の重点調査区域とし、この区域では調査地点を増やし、概ね15ヘクタールたり1点の試料を調べるとしているが、福島県はこの結果を受け、二本松市の調査地点を38から約300に増やして本検査を行うという。

 ところで、何故このような結果が出たのだろうか。確かな理由は詳細な調査に待たねばならないが、筆者は今のところ、土壌の特性に関連していると考える。土壌を構成する粒子が非常に細かい粘土が多い土壌では、セシウムの多くが表層の土壌粒子と結合(イオン結合)、水に溶け出すセシウムの量が少ない。水に溶け出さないかぎり、植物の根がセシウムを吸収することはできない。

 再三述べてきたように、東京大学と福島県農業総合センターの研究者が行った福島県の水田・畑地土壌からの放射性物質の水への溶出試験によると、溶出率は20%だった(福島県の水田および畑作土壌からの137Cs、134Csならびに131Iの溶出実験 [1464KB] ラジオアイソトープ、Vol.60 No.8 (2011))。この場合には、稲は土壌中セシウ ムの最大限20%を吸収できるだけである。稲の中のセシウムの17%が玄米に分布するという研究結果(稲のセシウム 白米への移行わずか 分散割合を発表 畜産草地研究所 日本農業新聞 11.8.4)を適用すると、土壌から玄米へのセシウムの移行率(移行係数)は 最大で20%×17%=3.4%(0.034)ということになる。500ベクレルが検出されたところの土壌がこれと同じだとすると、最大でも3000ベクレルの3.4%、102ベクレルしか玄米には移行しないはずである。

 福島県の水田土壌の50%を占める灰色低地土(粘土が多い)を使った福島県農業総合センターの試験によると、土壌から玄米への放射性物質の移行率は0.5%から1.5%にすぎなかった(玄米から検出は微量 県農業総合センターが栽培試験 福島民報 11.9.10)。この場合には、3000ベクレルの土壌から玄米に移行するのは15ベクレル〜45ベクレルにすぎない。

 そこで、二本松市旧小浜町の土壌がどういうものか調べてみる。そうすると、上の二つの例と異なり、ここでは「緩傾斜〜急傾斜の山間部に分布」する「地表から35cm〜60cmにある層の土性が砂質〜壌質な褐色森林土」が 支配的である(そして、小浜近隣地域ではこのような土壌は見られない)。

 http://agrimesh.dc.affrc.go.jp/soil_db/figure/figure_map.phtml?def_code=07&map_lat=37.563919&map_lon=140.512623&map_zoom=15

 恐らくはこのような土壌の土性(土壌を構成する粒子の大きさ別の割合)からして、降下したセシウムの多くが土壌粒子に固く結合することなく、水に溶出したのだろう。それを稲が吸収した。

 そうであれば、このような土壌を持つ場所では、土壌の汚染度は比較的低くても(土壌から玄米へのセシウム移行係数を0.1と想定しての農水省の水稲作付の暫定規制値5000ベクレルを下回っていたとしても)、暫定規制値以上のコメが出てくる可能性がある。こうした水田土壌を持つ地域では、一層念入りな調査が必要ということにならないだろうか。