農業情報研究所環境原子力東電福島第一原発事故関係2011年10月6日

農水省 平成23年産稲からのもみがら・稲わら通知 私には実行不能

 農水省が9月30日、「平成23年産稲から生じるもみがら及び稲わらの取扱いについて」なる通知を「地方農政局及び関係団体等」に向けて出した。放射性セシウム濃度が土壌改良資材等の暫定許容値(400ベクレル/kg)を超えた場合、関係都県は、もみがら、稲わらを土壌改良資材等に利用しないよう指導するというものだ。

 平成23年産稲から生じるもみがら及び稲わらの取扱いについて
 http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/kokumotu/pdf/110930-01.pdf

 
 ただ、もし私がこれを受け取る側(現場)にいたら、どう実行したらいいものか、大いに戸惑うだろう。稲わらの飼料用利用に関する通知の不備から生じた牛肉汚染騒動の二の舞にならないかと心配だ。

 もみがらについては、その放射性セシウム濃度は、玄米調査で得られた玄米の放射性セシウム濃度に、玄米中の放射性セシウム濃度に対するもみがら中の放射性セシウム濃度の比率(「濃度比」である「3」をかけて算出するか、実際に調査せよと言う。この濃度比は、23年産の稲を用いて玄米ともみがらの放射性セシウム濃度を測定した結果、データのばらつき等を考慮して、「3」を用いるのが適当と判断したということだ(稲の中のセシウムは、稲わら、白米、、ぬか、もみ殻、根にそれぞれ73%、7%、10%、7%、3%が分布するという畜産草地研究所の以前の研究結果とはずいぶん異なるが、ここではこれは問題にしない

 ただ、今までの玄米本調査(予備調査の結果はどう扱うのだろうか。両調査の結果は必ずしも一致しない)で、3倍すれば400ベクレルを超えるセシウム濃度(400÷3=133ベクレル以上)の玄米は、福島県で1例が見つかっているだけだ(→2011年産米放射性物質検査結果 )。関係諸県は、玄米調査の結果からして、指導しなければならないようなもみがらはほとんど無いと見るだろう。となれば、実際の調査を行う必要性も認めないだろう。結局、もみがら利用や処分は野放しになるだろう(通知が出た直後の10月初めに東北地方を旅したが、もみがら野焼きの煙がところどころに上がっていた。通知のタイミングも遅すぎるのだ)

 玄米調査から規制値を超える可能性があるもみがらが稀に特定されたとしても、検体(玄米)採取圃場で生産されたもみがらだけを規制すればいいのか、周辺圃場、この圃場が属する旧市町村、あるいは現市町村のもみがらも規制すべきなのか、誰が、どう判断するのだろうか。伊達市旧上保原村の玄米1検体からは161ベクレルが検出されたが、同じ旧村の他の1検体からは不検出だった。同じ旧村内でもこれだけのバラツキがある。適切な「指導」のためには全部調べる必要があるが、それは実際に可能だろうか。

 稲わらの放射性セシウム濃度については、「夏作飼料作物通知に基づく稲わらの調査結果をもとに、水分含有率を考慮して製品重量当たりの数値に換算することにより、放射性セシウム濃度を算出する」 。ただし、「@ 土壌中の放射性セシウム濃度が高い地点がある市町村、A 玄米の調査結果により、稲わらの調査が必要と判断される市町村では、市町村毎に土壌や玄米の放射性セシウム濃度が高い地点で調査を実施する」という。

 しかし、「土壌中の放射性セシウム濃度が高い地点がある市町村」、「玄米の調査結果により、稲わらの調査が必要」と判断するための具体的基準は、少なくとも通知を見るかぎり、まったく示されていない。土壌中の放射性セシウム濃度が高いとは、土壌1キログラムあたり1000ベクレル以上ということか、2000ベクレル以上ということか、それ以上ということか。その上、詳細な土壌調査が完了しているわけでもない。

 玄米に比べてのもみがらの「濃度比」は「3」ということだが、稲わらについては「濃度比」が示されていない。それで、「玄米の調査結果により、稲わらの調査が必要」とどうやって判断するのか。「3」以上は確かだろう。仮にもみがらの3.3倍とすれば(これは十分にあり得ることだ)、稲わらの「濃度比」は「10」となる。玄米のセシウム濃度が40ベクレルを超えれば、稲わらのセシウム濃度は400ベクレルを超える。40ベクレルを基準に判断すべきなのだろうか。

 仮にそうとしても、40ベクレルを超える玄米検体が採取された圃場の稲わらだけを規制すればいいのかどうか、もみがらと同じ問題がある。ともあれ、私にやれの言われても無理だ。