農業情報研究所環境原子力東電福島第一原発事故関係2011年10月7日

コメの土からの放射性セシウム吸収は微小 研究者 早すぎる一般化

 「福島第1原発事故で放出された放射性セシウムによる福島県内の玄米汚染濃度は、国が設定している移行係数(0.1)の10分の1以下にとどまることが6日、東北大大学院農学研究科の南條正巳教授(土壌立地学)の解析で分かった」そうである。

 玄米セシウム汚染濃度 福島、国係数の1割以下 河北新報 11.10.7

 解析に使ったのは、農林水産省が3月30日に発表した土壌汚染データの福島県分のうち、作付け制限地域以外でサンプル数が多い二本松市、伊達市、本宮市、川俣町、大玉村、郡山市、田村市、いわき市の8市町村分(64地点)、玄米の方は福島県が実施した調査の8市町村分計308サンプル(9月30日現在)を使用した。 

 その結果、64地点の土壌1キロ当たりの放射性セシウム濃度の平均値は2136ベクレルだった。他方、玄米1キロ当たりの平均放射性セシウム濃度は、検出下限値を20ベクレルとした場合には24.6ベクレル、検出下限値を10とすると12.6ベクレルとなる。従って、移行係数は0.01〜0.006となるという。 

 門外漢にはよく分からない話だ。玄米の検体採取地点は、土壌採取地点とは一致しない。玄米採取地点の土壌の放射性セシウム濃度(汚染度)と比較しない限り、移行係数は分からないはずだ。平均化という操作で欠点が埋められるわけでもない。土壌の汚染度も、玄米の放射性セシウム濃度もバラツキが極めて大きく、平均的数値は却って真実を隠してしまう恐れがある。平均的数値の意味するところは、個別の例の仔細な検討を経て初めて明らかになる。

 実際、移行係数には、場所によって大きな違いがあるかもしれない。玄米検体採取地点の土壌汚染度が調べられ、公表されれば問題は直ちに解決するのだが、実際はそうなっていない。仕方がない。最も近そうな値を見るために、玄米採取地点に最も近そうな土壌調査地点を地名から探り、その地点の土壌汚染度と比較できないかと、適当な例を探してみた。

 福嶋県伊達市旧上保原村の玄米のからは161ベクレルの放射性セシウムが検出されている。他方、水田土壌調査地点には「保原」の名の二地点が含まれており、この二地点の土壌(畑、水田の調査はなし)の放射性セシウム濃度は2200ベクレルと2011ベクレル、平均で2106べクレルだ。この数値を使って移行係数を計算すると、0.07となる。同様なやり方で、国見町藤田(玄米から84〜99ベクレル検出)でも、0.07の係数が得られる。他方、伊達市旧月舘町では、0.009にしかならない。

 これが実態を反映しているかどうか、確かなことは言えないが、移行係数は場所によって大きく異なるとだけは言えないだろうか。となると、平均からして移行係数は微小と一般化してしまうと、地域によって起こり得る重大な問題を看過し、適切な対策を怠ることにならないだろうか。この研究を受け、環境科学技術研究所(青森県六ケ所村)の塚田祥文主任研究員は「国が設定した移行係数は大気からの直接沈着による汚染も加味されている。純粋に土の中からの移行となると、その値は0.01を大きく下回るという研究報告もあり、今回の分析は土からの吸収量は大きくないことを実証した」と言いきる。

 南條教授はさらに、予備調査で500ベクレルが検出された二本松市の例をあげ、「二本松のような例外的に高いケースは、樹木に付着した放射性セシウムが飛散するなど、二次的な形で稲に直接沈着した可能性がある」と、土からの吸収が少ないという説を補強する。塚田研究員も「森林の放射性セシウム濃度は非常に高い状態が続いており、山から汚染度の高い水が水田に流れ込むと、玄米が高濃度に汚染される可能性がある」と土以外の影響に着目していると同調する。

 これもおかしな話だ。玄米はもみがらにつつまれている。茎や葉、もみがらへの「直接沈着」はあるだろうが、玄米への「直接沈着」があり得るのだろうか。茎や葉、もみがらからの玄米への移行も考え難い。そういう研究例があるならどなたかお教え願いたい。