農業情報研究所環境原子力東電福島第一原発事故関係2012年1月14日

現行規制値で食品は安全 規制強化で「農業は壊滅的な打撃」論の陥穽 農家の健康はどうなる

  コープふくしまが、原発事故による食品放射能汚染にもかかわらず、通常の食事による内部被ばく線量は安全なレベルにあり、「現行の暫定規制値で十分に安全は確保されている」、新たに基準値を設けて規制を強化すれば「米の作付け制限がより広範な地域に及び、農業は壊滅的な打撃を受ける。農家は意欲を失い、賠償金であがなえるものではない」と訴えているそうである。

  「暫定規制値は安全」 食事検査で報告 文科省放射線審でコープふくしま 日本農業新聞 12.1.13

 農家のことを慮っているようで本当にそうなのか、疑念が浮かぶのを禁じ得ない。農業者とその家族、農地周辺住民の被ばくのリスクへの配慮がまったく抜けおちているからだ。

 福島県水田の半分を占める灰色低地土においては土壌から玄米への放射性セシウム移行係数は0.005(1/200)から0.015(1/67)という試験結果がある(福島の粘土質土壌から玄米への放射性物質移行率は微小 ヒマワリの除染効果も微小 福島の試験研究,11.9.10)。

 とすれば、現行規制値の500Bq/kg以上の放射性セシウムを含む玄米が生産された水田の土壌の放射性セシウム濃度は33,500-100,000Bq/kg以上となり得る。新たな規制値100Bq/kg以上でも、土壌は6,700-20,000Bq/kg以上となり得る。仮に米が安全で、売れるとしても、こういう田んぼを使って営農を続けるのが安全かどうか、農家家族や近隣住民が住み続けても大丈夫なのか、それが問われるべきレベルであろう。

 福島県産農産品の利用(バイオ燃料用利用も含め)促進で福島県農業の存続・復興を!という人々は、本当に農家のことを考えているのだろうか。ひょっとすると、年20ミリシーベルト以下なら住めると避難区域解除―避難者の早期帰還を強要する政府以上に 無責任で無慈悲な態度ではないのか。真に農業・農家のことを考えるなら、すべての農地の土壌を調査、汚染度に応じた適切な対応方法(除染、耕作継続、農業からの一時撤退、移住など)を講じることこそ急がねばならない。 (少なくともそれなしには、福島県の農地・農業を守るために頑張って下さいと言う勇気は私にはない)

 たとえば、白河市の東西しらかわ農協、管内約7,000ヘクタールを1ヘクタールずつに分け、計7,000地点で土壌の放射性セシウム含有量を調べる、農地としては福島県内で最も大規模な放射性物質調査になるという。この地域の土壌汚染度は中通り北部・中部に比べると概ね低い。それでも、東西しらかわ農協稲作部会長の鷺野谷弘行さんは、「自分の水田が安全なのかと、みんな不安を持っている。安心して農業ができるようにしてほしい」と期待しているということだ。

 東西しらかわ農協 土壌7000ヵ所で放射線測定へ 河北新報 12.1.13