農業情報研究所環境原子力東電福島第一原発事故関係2014年8月5日

水田除染 「田起こし」自重 表土除去に賭けたいわき市志田名地区の現実 東京新聞が報告 

  福島原発事故から1年を過ぎた頃、放射性セシウム汚染水田での営農再開を急ぐ福島県の多くの農家が、それが可能なところで「反転耕」(天地返し)あるいは「深耕」と呼ばれるやり方での農地「除染」にとりかかった。これは、降下した放射性セシウムの大部分がとどまる表層土壌(→農村工学研が水田放射性セシウム除染試験 大部分の水稲既作付水田でも有効か?,11.8.24)を作土(耕土)の下に埋め(混ぜ)込むことで土壌の平均セシウム濃度を薄め、それにより作物の放射性セシウム吸収を抑えるとともに、農地上の空間線量も抑えようというものだ。

 これによって当該農地から放射性セシウムが消えるわけではない。従前どおりの「安全・安心」な営農が可能になるわけではない。より理想に近い除染方法は、大部分の放射性セシウムが沈着している深さ5センチまでの表土を丸ごと取り除く方法である。しかし、これは除去自体や作土の回復に大変な手間暇がかかるし、大量に発生する汚染土壌の保管場所の確保も気の遠くなるような難題となる。反転耕や深耕には、放射性セシウムを地中深くまで拡散させ、こういう除染を未来永劫不可能にしてしまうという欠陥があるとしても、福島県の農林地等除染基本方針がこれを農地除染の中心的手段に位置づけたのは現実的な選択だったとは言えよう(農地除染の最有力手段、反転耕の実演が始まった 農地土壌生態系はどうなる?,11.12.14)。

 ところが、福島県には、このようなより理想に近い除染方法を実施すべく、「田起こし」を隠忍自重してきた地区もある。そういう地区で、漸く行政による表土除去が始まった。いつものことだが、本来ならばその任に当たるべき学者・研究者に代わり、今日の東京新聞がこの地区に関する貴重な調査報告を提供してくれた。

 表土除去遅れ、苦闘いわき・志田名 セシウム深く浸透(核心) 東京新聞 14.8.5 朝刊 2

 この地区とは、いわき市志田名(しだみょう)地区。「放射性物質の拡散を避けようと、ずっと田起こしはせず、ようやく始まった行政による表土除去で再起を図ろうとしている」。「高濃度に汚染された表土五センチ程度をはぎ取り、ほぼ汚染のない土を入れて耕作し直す―。先祖が作り上げてきた土を捨てる決断は苦しかったが、志田名地区の人たちはこの道を選んだ」という。

 ところが、除染が終わった農地の深さ二〇センチまでの土壌を取り、よく混ぜて放射性セシウムの濃度を調べると、「八五ベクレル、九三三ベクレル、一六九ベクレル、五九五ベクレル。どこも(除染前の表土の五四〇〇ベクレルに比べて)大幅に濃度が下がったものの、場所で数値が違う」。

 測定した数値を(除染について助言をした独協医科大学の)木村准教授に伝えると。「事故から四年目。もっと早ければ、こうはならなかった。土が凍結・融解を繰り返すうち、土に隙間ができ、セシウムは深く浸透してしまった。沢の水をじかに引き込まず、濁りを沈殿させてから使うなど、きちんと管理すれば、汚染の少ない作物の生産は可能なレベルだが、これが現実だ」。

 四年の歳月の間に、自然が土を耕してしまった。それだけではない。この田の持ち主の大越さん、「心配してんのは、田んぼだけじゃね。あぜは除染してねえべ。あぜの草をウシに食べさせ、そのふんを堆肥にして循環させてんの。・・・」。草のセシウム濃度を調べると一〇〇ベクレル弱。あぜの除染をしないと、せっかく除染した農地、堆肥を通じて汚染が広がる。

 これらすべて、農地、特に水田の除染の難しさを知らせる貴重な”科学的”知見である。ただし、作物(さくもつ、サクブツ=NHKではありません)に放射性物質が出なければいいじゃん、風評だけが問題だと言う人には関係ない話だが・・・。