農業情報研究所環境原子力東電福島第一原発事故関係2017年6月14日

福島県 避難農業者の営農再開支援の新事業 「将来帰還」の意志を示す者を優遇の計略

福島県は東電福島第一原発事故で避難を余儀なくされた12市町村の農業者が避難先や移住先において営農再開に向けた取組等を行う場合に必要となる農業用機械、施設、及び家畜の導入等に要する経費を補助する新たな支援事業に乗り出す。事業の目的は「避難農業者の生活再建を図ること」だ。

 補助対象者は、(1) 原子力災害の影響により、避難区域や作付制限区域等が設定された原子力被災12市町村に、原子力災害の発生時、居住し、農業経営を行っていた者、(2)原子力災害後農業経営を休止していた者又は休止していたと見なせる者で、原子力被災12市町村外(県外を含む。)において農業経営の再開等を行う避難農業者で、(3)認定農業者、農産物の販売を目的とする農業者などで、これら農業者の経営再開資金の1/3以内を助成する。ただし、「帰還困難区域に指定された区域の農地台帳に登録されている、又は住民票を有しており、かつ、将来的に原子力被災12市町村内で農業経営を再開する意思があることを避難元市町村の長が確認した場合は3/4以内」を助成するという。

避難農業者経営再開支援事業について 福島県農業振興課 17.6.13

避難先での営農再開支援 福島県が初の事業、機械や施設費補助 福島民友 17.6.14

私は原発事故から1年もたたない2012年初め、避難指示が出た地域に限らず、土地の上の空間線量率が「チェルノブイリ事故に伴ってウクライナ政府が設定した「移住義務」発生基準、〇・五七一マイクロシーベルトをはるかに超える」ような地域が福島県内外に見られ、このような土地で「野良仕事を続け、舞い上がる土埃を吸いつづければ、小学校などの校庭利用で文部科学省が採用、大顰蹙を買った年間被曝限度、二〇ミリシーベルトも軽く超える恐れがある」、「ここは、もはや安心して農業生産活動と生活を営める場所ではないのかもしれない、避難区域でなくても「場所によっては住民の移住が最善の処方箋となるだろう」と書いた(放射能汚染がつきつけた食と農への難問──土壌生態系の崩壊は何をもたらすか 世界 20122月号)。

農地の放射性物質濃度は当時(福島県の放射性セシウム濃度別農地分布2012330日))に比べれば総じて下がっているのは間違いないだろう。しかし、帰還困難区域ではもちろん、避難指示が解除された地域にも、「安心して農業生産活動と生活を営める」とは言えない場所は処々に残っている(例えば、「飯舘村で暮らす伊藤さんの被ばく記録」再論 それが語るふくしまの「真実」を見据えよう 時評日日 17.6.8)。遅きに失したとはいえ、新事業開始は歓迎すべきことではある。ただし、心からは歓迎できない。手厚い支援を受けるために、農業者は将来は元居住地に帰還する意思を明示せねばならないからだ。

「避難農業者経営再開支援事業実施計画承認申請書」には「将来的に、避難元市町村に帰還して農業経営を再開する意思の妥当性確認」欄がある。とりわけ、営農を何時再開できるか分らない、あるいは自分が生きている間に営農は再開できないかもしれない帰還困難区域(等)の農業者に将来帰還の意志があるどうかを問うことは、そもそも「避難農業者の生活再建を図る」という事業の目的に背くものではないか。

「避難農業者の生活再建を図る」というなら、新天地での生涯営農を決めた者も等しく支援すべきだろう(そのためには「国」もこの支援事業を後押しせねばならないが)。そのとき、これは帰還をためらう人の「早期帰還」を促すための事業ではない、真に「避難農業者の生活再建を図る」ための事業だと、心から歓迎されることになるだろう。