EU:科学委員会、ホルモン牛肉の危険性を再確認

農業情報研究所

02.4.24

 23日、EUの「公衆衛生に関連する獣医学措置科学委員会(SCVPH)」が、牛用の成長ホルモンとしてのホルモンの使用は消費者の健康にリスクを生じ得ることを確認する意見( Review of specific documents relating to the SCVPH opinion of 30 April 99 on the potential risks to human health from hormone residues in bovine meat and meat products (adopted on 03 May 2000) ;Press release:Growth promoting hormones pose health risk to consumers, confirms EU Scientific Committeeを公表した。

 下に述べるWTO控訴機関の判決の後、欧州委員会は6つのホルモンの毒性学的側面、あり得る乱用やコントロール上の問題とともに、環境的側面も対象にした17の研究を始動させた。今回の意見は、これらの研究とその他の最近の科学的データを検討した結果である。この意見は、以前に出された二つの意見(1999年と2000年の意見)を修正する理由はないと最終的に結論している。

 この意見では、蓄積された証拠によりエストラジオール17の突然変異誘発性ポテンシャルが確認され、トレンボローン、ゼラノール、メレンゲストロール・アセテートの複雑な生体内変換が認められた。前・周産期のホルモンへの暴露による癌発生率への影響に関しても実験的・疫学的データが評価された。 

 背景と経緯

 1988年 EUが農用動物の成長促進のためにエストラジオール17、テストステローン、プロゲステローン、ゼラノール、トレンボローン・アセテート、メレンゲストロール・アセテートの使用を禁止。EU構成国と第三国に適用。

 1997年 この禁止に抗議する米国・カナダの提訴を受けたWTOパネルが、この禁止措置は衛生植物検疫(SPS)協定に違反と判決。

 1998年 この判決に対するEUの控訴に対し、WTO控訴機関がパネルのほとんどの事実認定を廃棄。但し、EUの輸入禁止は、このような措置が人間の健康に対するリスクに直接関連するアセスメントに基づかねばならないという要件に合致しないとパネルの結論を支持。これを受け、欧州委員会は追加的リスクアセスメントを行い、SCVPHに対して、6つの成長促進ホルモンで処理された牛肉と牛肉製品の残留ホルモンから生じる人間の健康へのリスクの評価を委任。

 1999年・2000年 SCVPHが6つのホルモンのどれについても1日当たりの許容摂取量は設定できないと結論。エストラジオール17については完全な発癌性が認められ、利用可能なデータではリスクの数量的評価はできないとした。

 2000年5月、これを受けた欧州委員会がエストラジオール17とそのエステル様派生物の農用動物への使用を決定的に禁止すること、他の5つのホルモンについては、一層完全な科学的情報が利用できるようになるまで暫定的に使用禁止を継続することを提案。

 今回の意見は、欧州委員会のリスク管理の科学的根拠を強化するものである。長期にわたる米国とのホルモン牛肉紛争も新たな局面に入ると思われる。