ビタミンE大量摂取は死を速める恐れー新研究

農業情報研究所(WAPIC)

04.11.11

 ビタミンEには強力な抗酸化作用があり、細胞内での酸素の不完全燃焼から生じる活性酸素から体細胞・組織を保護するとされてきた。また、傷の回復を速め、免疫システムを強化、血液循環を健全にするとも考えられている。栄養学者はバランスの取れた食事で一日当たり10-20mg(15−30国際単位=IU)を摂取するように勧めている。しかし、体内に蓄積することはないから摂りすぎの害はない、その大量摂取は心臓病や癌を防ぎ、老化も抑制すると憶測され、ビタミンCと併用すると、CがEの抗酸化作用を高めてくれるから一層効果的などと喧伝され、一日あたり400IU(267mg)を超えるサプリメントが市販され、多くの人々が利用している。米国のガイドラインも、一日当たり摂取量上限を1,500IUと定める。

 ところが10日、ルイジアナで開かれた米国心臓学会で、このような大量摂取は死を速める恐れがあるという新たな研究が発表された。ジョンホプキンズ大学の疫学者・エドガー・ミラー等による研究で、”Annals of Internal Medicine誌に掲載されるという。

 10日付のNews@nature*)、NewSceentist**)のニュースによると次のとおりだ。

 従来の研究では摂取量はほとんど考慮されていないと、ミラー氏等研究者は、世界中で行われた19の臨床試験で、およそ13万6,000人の摂取量と死亡率を分析した。試験で使われた摂取量は一日当たり16.5IUから2,000IUまで、150IUまでは悪影響はなく、健康を増進するかもしれないが、これを越えると死亡のリスクが増大、400IU以上で最大になることが分かった。

 しかし、研究者は、高摂取量の試験は少数で、被験者は心臓病のような慢性的健康問題を抱える者が多いことから、結果は必ずしも一般化できないし、大部分の研究は死因には特に触れていないから、このようなことが起きるメカニズムについては結論できないと言う。ただ、あり得る四つの原因をあげる。

 ・ビタミンEは抗凝血作用があるから、既に血液を薄める薬剤を摂取している人々には、卒中の原因となる出血のリスクが上がるかもしれない。

 ・サプリメントの摂取が不規則で、やめたときに胸痛などの禁断症状が始まるかもしれない。

 ・高レベルの量でビタミンEの抗酸化作用が”変節”、通常はそれが保護する蛋白質や脂質を損傷する可能性もある。

 ・サプリメント中のビタミンEのタイプが、多くの食品に発見されるビタミンEの別の形を含む他の抗酸化物質に置き換わり、抗酸化システムのバランスを撹乱する可能性がある。

 原因の特定には一層の研究が必要だが、研究者は、一層の臨床試験がその効能を証明するまで、あるいは少なくとも有害でないと証明するまで、こうしたサプリメントの摂取はやめるべきだと勧める。ビタミンE同様に脂溶性のビタミンA、Dも体組織に蓄積するだろう。ビタミンCは水溶性だから同じように蓄積することはありそうもないが、ビタミンCとEの大量摂取とその併用の影響は知られていない。ミラー氏は、「ビタミンCについての判決もまだ出ていない」と言う。

 *Excess vitamin E may harm health,News@nature,11.10
 
**High doses of vitamin E may hasten death,NewScientist.com,11.10