バングラデシュの米が高濃度砒素汚染 地下水に代わる代替灌漑水の確保が急務

農業情報研究所(WAPIC)

06.7.14

  高レベルの砒素を含むバングラデシュの水を飲むことの危険性は知られているが、バングラデシュ南西部で栽培される米を食べることも同様な危険性があると警告する新たな研究が発表された。

 A. A. Meharg et al,Increase in Rice Grain Arsenic for Regions of Bangladesh Irrigating Paddies with Elevated Arsenic in Groundwaters,Environmental Science & Technology, doi: 10.1021/es060222i (2006)
:Abstract

 バングラデシュの水は例外的に高いレベルの砒素を含み、皮膚病や癌など、深刻な健康問題をもたらしてきた。この健康リスクを回避する努力がなされてきたが、砒素に汚染された地下水は水田の灌漑にも利用されている。研究者は25の地域で栽培される野菜、豆類、二種の米の砒素のレベルを測定した。1日当たりに摂取される典型的な量の米が含む砒素の量がWHOの定める飲料水における最大限許容量に相当するのは1地区でしかなく、大部分の地区の米が含む砒素の量はこのレベルを超えていた。

 これら地区の農民は、飲料水に加えて米からも砒素を取り込むことになる。飲料水の浄化は可能としても、米は多年にわたり汚染され続け、砒素のレベルは年々高まることになる。影響を受ける地域は国の25%から50%に及ぶという。

 米の汚染を避けるためには、現在灌漑水の70%を占める汚染地下水に代わる代替水源を見つけ出さねばならない。しかし、近年の干ばつ傾向とインドの取水の増大で、バングラデシュの河川は干上がりつつある。これは国の水政策にとてつもない難題を突きつける。しかし、この問題が解決されない限り、国の主食の確保も危うくなるだろう。